special
□素直になれない、 ILOVE U
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0921 CHEN BIRTHDAY story
“素直になれない、ILOVE U”
不機嫌な気持ちにする、何処へ行っても何をしても、常に身体中にまとわりつく蒸し暑い季節が過ぎて、少し肌寒さを感じ始めた今日この頃。
がんがん照りつける太陽の暑さも落ち着いて、目覚めの朝も随分と涼しくなった。
寝過ごすには十分で、本当に寝やすい季節。
「ん・・・」
目覚ましより先に目が覚めたらしく、近くにあった時計は朝の4時45分頃を指していた。
まだ起きるには少し早いなと思いながら、かけていた毛布の中に潜ると、ふと隣にある温もりに触れて、気づく。
そうだ、僕。
あれから、随分慣れたけれど。
あの頃はぎゃーぎゃー随分騒いだなと、自分のことながらに苦笑する。
それでも、優しく笑って、隣にいてくれた貴方は。
本当に、温かい人だ。
“一緒に寝るのはいいけれど、どうしてこうならなくちゃいけないの!?”
“嫌なの?チェン君”
“嫌じゃないけどっ”
嫌じゃないけれど。
貴方と、部屋が同室になって、僕達が恋人同士という関係になってから、2人きりになる事に抵抗を感じるようになった。
嫌いだから、嫌だから。
そうじゃなくて。
隣にいることも、側にいることも嫌じゃない。
今までだってそうだった、けれど。
たち位置が違うだけで、こんなにも感情は変わる。
優しく見守るその瞳も、その声も。
温かい掌も、抱き締めてくれる腕も。
嫌いじゃない。
けれど、こんなに近くにいて、こんなに側にいるのは。
“恥ずかしすぎる”
「・・・、ふふ」
最初の頃の、僕自身を思い出してさらに苦笑。
まるで子供みたいに騒いで、暴れてた、こんなうるさい奴に、恋をするなんて。
絶対貴方は変わってる人。
「・・・、」
あんなに、嫌がっていたのに。
今では貴方の腕に包まれて眠ることが当たり前になっていて、身体中に貴方の温もりを感じる。
少し見上げるだけで、貴方の寝顔が見える。穏やかな顔で、僕の隣で眠っている。
僕達に、そんなに身長の差はないから、唇までの距離だって、本当に数センチ。
少し丸くなって、眠る貴方の唇が僕のおでこに触れる度、思う。
キス、したいなって。
「・・・、シンちゃん」
まだ、夢の中の恋人の名前をそっと呼び掛ける。
「シンちゃんてば」
もう一度呼び掛けて頬をつねってみる。
“よし”
ぴくりとも動かない、貴方の様子を確認して、少しだけ近づく。
本の数センチの距離なんだから、少し近づくだけで唇は貴方に触れた。
“・・・、”
これもキスの内にはいるのかな、なんてちょっと考えてみたりして。おかしくなって、くすりと笑う。
それから、もう一度だけ、キスをした。
本当は、いつも思ってることがある。
でも、僕は素直じゃないから。
つい、口を閉ざしてしまうけど。
こういう時じゃないと、素直になれない僕を許して。
「シンちゃん」
側にいてくれて、ありがとう。
大好き。
もう少しだけ、このままでいたいな。
そう思いながら、もう一度毛布の中に踞る。
今度は、貴方の背中にぎゅっと抱きついて。
貴方と、一緒ならきっと今日も素敵な一日。
END