自由館

□高峰圭汰の話
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ま、そんなこんなで再び新たな人里に着いたようだ!10時間以上歩いたと思うがこの体は全く持って疲れていない化け物並みの体力だなまぁ大いに助かっているけどと思いつつ村へと足を踏み入れた。

どうやらこの里は城下町らしく以前いた場所より多くの人間で賑わっている。
色んな物に目移りしながらあっちらこっちら店を冷やかしつつ(なにも買わないから冷やかしになってるが無意識、しかし見目がいいので客引きになってるので店の人も文句は言わない)城下町を存分に楽しんだ。

はて、少しは疲れたし休もうかなとちょうど目先に見えた茶屋に入りとりあえず暖簾にも出ていた団子を頼んだ。お金の単価はわからないが回りの人間の支払いを見てある程度の辺りをつけた。まぁ、これくらい問題はなさそうだ。詳しい金の数えかたや価値が未だによくわかっていないので仕方ない。そんなに時間もかからないうちに届いたお茶と団子に早速だと口をつけた。
もっちりとした団子は平成のものとは違うが人が作り上げた優しい味がした。
そんな団子にほっこり癒されていればどうやらガヤガヤと柄の悪い連中が暖簾をくぐって店内へ入ってきた。思わず僅かに眉を潜めてしまったが別にまだ悪いことをしたわけでなし見た目だけで判断してはダメだとそちらを見ないようにしてお茶を啜っているとふとこんな声が聞こえた。

「おい嬢ちゃん」
「ご注文はお決まりですか?」
「へへ嬢ちゃんなかなか可愛い顔してるじゃねぇか。どうだ今から俺達とイイコトしようぜ?」
ニヤニヤと男はイヤらしい笑みを浮かべている。それでも嬢ちゃんと呼ばれた団子屋の娘さんは少し困った顔をしただけで
「ごめんなさい今お仕事中で」とやんわり優しく断りを入れた。
「いいじゃねぇか」そういって彼女の手を少し強引に引っ張った彼女は小さく、きゃっと悲鳴を上げた。恐らく握られた手が痛かったのだろう。
助けを求めるように周りをみた。
彼女と眼があったであろう店の客はみないふりをして出ていったり恐らく男の腰にある刀を恐れているのだろう手が出せないでいた。
俺は思わず深い溜め息を吐いた。
何だろうか、俺はついてないのだろうか?
この時代に来てそんな男たちを見かけてばかりだ。そんな風に溜め息はいて視線を上げたとき偶然パチリと娘さんと目があってしまった。これは、助けなくては行けないだろう。ここで逃げ出しては彼女が可哀想過ぎる。俺は男たちに若干びびりつつも席を立ち上がった。そしてこう言ったのだ。
「あー、お兄さん方。彼女も困っているようですしその手を離して差し上げてください」
敬語なのは気にしないでくれ。決してけしてビビったのではない相手が年上だから…。言い訳はやめよう。恐かったから敬語を使った、これが事実である。
くそぅ、ただの高校生がそうそう強面のオッサン達に話しかける機会があると思うなよ。
柄の悪い連中はこっちを睨み付けるようにみてきた。こっえ!
「あ?なんだてめぇぶっ殺されてぇのか!」
ドスの聞いた声で怒鳴られた。
くっ、ビビってなんかないからな。
出来るだけ表情に出さないようにと気を付けながら(とは言ってもこの体の持ち主の表情筋は死んでるって言いたくなるくらい固いが)男の方へと近づきそっと娘さんの手から剥いだ。
「その汚い手で彼女に触れるな、と言っているのですよ?」
少し力を入れて男の手を握れば男は面白い程に痛がった。
「っ痛ぇ!離せよ!!」
男に脂汗が滲むのが見えた。本当に嫌そうに腕を振ってくるのでパッと離して然り気無く娘さんを背に庇うように立つ。
男は痛そうに俺が掴んでいた箇所を抑えている。
「畜生!ぶっ殺してやる」
そういって連中が刀を抜いてきたので娘さんを離れたところに避難させた。
「やれやれ、本当にバカな連中だ」
表面上は非常に冷静だが内心的には凄くガタブルなのを忘れちゃ行けない。
対刀なんてのはよくあったがそれでも俺(精神)がこうやって向き合うのは本当に片手で数えきれる程。倒す自身などないがこの体の持ち主はどうやら余裕で倒せるようだ。
身体には自身の表れとでもゆうようにピクリとも揺れていない。こういうところは精神が関係してなくてよかったなぁと思う。
さて、こんなこと考えている場合ではない。目の前の敵が襲いかかってきた。
その一太刀を容易く避け手首を手刀で打つ。そうすれば簡単に落とす刃物。やれやれ危ないなと取り落とした武器を奪い首に添えてやれば顔を青ざめさせヒッと短く息を吸った。周りはそのさまをみてどうやら動けないらしい。
「死にたくないなら二度とここを訪れないことだね」
そういって男を仲間の方に放り投げ止めだと言うように連中の足元へ刀を投げてやれば連中は尻尾を巻いて逃げていった。
これだけビビらせておけば復讐なんて馬鹿なことも考えないだろうと安堵の息を吐いた。
ふぅ、どうやら無事追い返せたようだ。
連中の姿が見えなくなったと思ったらワッと回りがわいた。いつの間にか野次馬が出来ていたらしい。
「兄ちゃんすごいな!」「スカッとしたよ」「あんた何処から来たんだい」「強いねぇ!」「どうやって鍛えたんだ?」「惚れるねぇ」「凄ぇ」
肩を叩かれ周りは笑っていた。
そんなことは人生ではじめてなので照れてしまう。
「あの!」
ふと後ろから可愛らしい声が見ればそこには先程助けた団子屋の娘さんの姿が。
「先程は助けて頂きありがとうございました!」と笑顔で礼を言った。
うん。可愛い子だなぁ。
「いえ、むしろ助けるのが遅くなり申し訳ありません」
なんだかんだ暫く傍観してたからな。
申し訳ないわ。ごめんね。お嬢さん。そんな年変わらないっぽいのにね。
「そんなことありません!お礼をさせてください!」
そうしてお礼だとお団子をご馳走になった。


お礼として追加で頂いた団子を食べていると正面に人が座った。
…?他に席は空いているのに何故だ?そう言うものなのかな?ともっちゃもっちゃしているとその人が喋った。
「あんた強いねー!どこで鍛えたんだい?」
笠であまり顔は見えないが明るそうな声だ。「え、あ、その」
正直どこで、なんて俺が聞きたい。
うだうだしてる俺に痺れを切らしたのか次の質問をしてきた。
「あんたさ何処からきたの?」
………?これは、えーと?
何だか軽い調子なのに実際は全く笑ってないような世間話程度の声の調子だってのに凄い疑われてるような。
「えっと…西の方から来ましたけど…」
「…西?西から何しに甲斐に来たの?」
訝しげな顔をされた。
あ、ここ甲斐って言うんだ。
「は?知らないで来たの?」
「え、」読心術ってやつか?
「声に出てるけど」
「まじでか」
呆れたような顔をされた。
「じゃあ何処に向かってるの?」
今、はっきり相手の顔を見たんだけど(相手が笠被ってたからよくみてなかった)何この人イケメンじゃねぇか。
「何処に、っていう目的はありません」
「は?目的ないの?」
「あえて言うなら自分探しですね最終的には安住の地探しです」
「本気で言ってる?」
「?はい。」
帰れないなら安心して暮らせる場所でのんびり生きたいからな。体の主には悪いけど俺じゃどうしようもないもんなぁ。
自分探しの意味的にはこの身体の人の情報集めと俺(精神)が平成に帰るためってのがあるし嘘ではない。イケメンは黙ってしまった。少し気まずくなったので此方から声をかけた。

「あー…とお兄さんのこと聞いてもいいですか?」
初対面の人間に自分の事ばかり聞かれるよりお互いを少しでも知った方が話しやすくなるだろうし。
「何、?」
「じゃあ、お名前は?」
「…佐之助だよ」
「佐之助、さん?」
名を繰返し呼んでみるとふとイケメンが外を向いた。まるでそこに何かがいるかのようにそして、ふと鳥のなくピーという声が聞こえたかと思うとイケメンさんは突然立ち上がった。
「あー、ごめんね!用事思いだしちゃった!」「え」「話の途中だけど俺様もういかなきゃ!」「あ、はい」「ごめんね!じゃ!」
そういってお兄さんは颯爽と去っていった。最後に「あんたとはまたどこかで会えるような気がするよ」なんて言葉を残して。

不思議なイケメンだった。
何故だか酷く心がざわついて落ち着かないというかなんというか。
てか俺様なんていう一人称生で初めて聞いた。現実でそんなこと言う人いるんだ…。

てなわけでそのあとは普通に団子屋をでた。

(※イケメン=(先代)猿飛佐助or先代真田忍隊長、甲斐に入ってきた怪しい人物に探りをいれた。だが話し方からして忍ではないと判断するが短い接触なので演技かも知れないと思っている。後にいい友達になる)
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