NO NAME

□憑依主
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【鳴門、憑依?トリップ主】

ある日目覚めたら私は別人だった。
別人とはいっても顔も性格も年齢も何も変わってはいないのだけど。
生きた世界が変わっていた。
今までどう生きたのかという記憶はある。
友人とどうやって出会ってきたのかも覚えている。私は確かに上忍として今まで戦い生きてきたのだ。不満は特にない。充実した日々を送っている。
ただ、ぶっつりと途切れたただの女子高生だった記憶も同時に存在しているのだ。
確か女子高生だった私は昨日まで普通に学校へ通い気の合う友人と笑いあっていつもどおりの日々を過ごしていたはずだった。
友人といつもと変わらず家に帰る帰路での記憶、そこからブツリと途切れているのだ。おかしい、おかしいな。よくわからない感情が頭を巡って嫌気が指してきた。
あぁ、何だか頭が痛い。
これはもしかして俗に言う前世の記憶と言うやつなのか。私はなんて平和な世界を生きていたのか。忍界大戦なんてない殺しあいのない生温い世界。
でも私は確かにその世界が大好きだった。
何だか気が遠くなる。
「ちょっ!○○!?」
あぁ、そうか今は任務の途中だった。
任務の相方をつとめる相手に迷惑がかk …
そうして私は意識を失った。









あれ、最初に目に入ったのは白い天井で
私どうしたんだっけと呟いたら隣から声がした。

「あ、起きた?」
顔の殆どを覆い隠した銀色の髪の、
「カカシ、さん」

あぁ、しまった、彼に迷惑をかけてしまった。任務の途中で気を失うなんて
「ごめん、なさい迷惑をかけてしまって」
何だか顔が見れなくて俯いてしまった私の頭をカカシさんは優しくなでた。
「いーよ。それより体調は大丈夫?突然倒れたからびっくりしたよ」
いつもみたいににっこり笑ってそう言う彼は何だか色々見透かされてるようで少しだけ苦手だ。「大丈夫です」少し素っ気なくなってしまったけれど私にはそれを言うだけで精一杯でなんだかまた頭がずきりずきりと痛んできた。
そうだ、私はただの女子高生で昨日は友人と遊ぶ約束をした。明日改札で待ってるて早く行かなきゃ待ちぼうけさせてしまう。あの子は怒ると怖いから拗ねてしまうと面倒なんだ。早く早く。
「○○?」
ふと掛けられた声に我に返る。
違う、私は忍だ。女子高生なんてこの世界には存在しないのだった。
ひたりと此方を見つめるカカシさんは心配そうな顔をしていた。
「ごめんなさい、何だかまだボーッとしてしまってご心配ありがとうございます。もう大丈夫ですから」
そういって笑ったらカカシさんの顔は困ったような少しだけ悲しそうな顔をしたんだ。「そ。無事ならいいんだ、でももう少し頼ってもいいんだヨ?」どうして彼がそんな顔をするのか私と彼はただ同じ上忍で私の方が後輩で彼にはまだまだ及ばなくて迷惑をかけてしまって何だろうどうしてなんだろうか。「あ、任務…」私の口から溢れたのはそんな言葉だった。それに彼は苦笑して「大丈夫、君を病院を運んだあとちゃんと終わらせたから」そうか、やっぱり迷惑をかけてしまったようだ。「ごめんなさい」さっきから謝ってばかりな気がする。それがわかっているのかカカシさんの眉も下がったままで「気にしなーいの!俺は謝られるよりお礼の方が嬉しいヨ?」ちょっぴり冗談めかして彼が言うから「ありがとうございます」ほんの少し頬がゆるんだ。



すっかり私は元気になんてよくわからない頭痛もなくなった私は久しぶりに外の空気を思いっきり吸った。

思い出した記憶は前世のものだったのだと見切りをつけたて今までの分を取り返すようにバリバリ働くことにした。

「そういえば、もうすぐ中忍試験ですね」
ゴホッと咳をひとつ目の前に然り気無く座る彼は確か暗部のハヤテと言ったか「あの何か…?」私は確か、休憩のためにこの店甘栗甘によったはずなのだが何だか仕事の匂いがプンプンする「実は○○上忍に試験官の補佐をして頂きたく」あぁ、やっぱりか口にしようとした団子を一度皿に戻した。

「なるほどつまりお仕事ですね」
「はい」おそらく拒否権など初めから無いのだろう。「わかりました」それからくわしい日付や内容のことを話してハヤテさんは去っていった。



そういえばあれは何年前だったか。
私が独りになったのは。
確か両親は九狐に殺られて即死したんだっけ。当時は毎日泣いてた。悲しくて憎くてそれでも取り返せない時間、命。世界を恨んで何で私がと泣きわめいたのだったか。

何故急に思い出したのかはきっと目の前にいる彼のせいだろう確か四代目の息子で腹のなかに九狐を封印された。
そのせいで里の人に避けられた可哀想な子。私は彼に同情したのか憎いという感情は沸いてこなかった。九狐が憎くないわけじゃないが彼も被害者の一人なのだ。
それによくよく考えればきっと、九狐も可哀想なのだろうから。

今ではすっかり明るい元気な子どもの名前は確かナルトと言っていたか。
羨ましい羨ましいや。
彼は何だかんだ今はとても幸せそうに見えるんだ周りを信頼して信用されて、そんな環境のなかでケンカもしながらでも笑っていられるから。
一次試験は滞りなく過ぎた。
私はカンニングチェックをする監察の大勢の中の一人。誰も私に注目しない目立たない位置。それでも目を光らせて下忍の様子を見つめるのだ。
二次試験、死の森で隠れて受験生の様子を監察するんだバカなことをしていないかと手は出さない姿は見せない、ただ潜み中忍の資格があるかを判断するだけだ無理だと判断したなら然り気無く不合格へと導くただそれだけ。
私の担当は特に新人である下忍になったばかりのものたちで特に目を引かれるのはナルトだ。彼はこの試験でどう変わるのか生きていられるのか。


まるで彼は物語の主人公みたいだ。

たくさんの試練を切り抜け彼は確かに強くなって周りを巻き込み大きく物語を進める。そのさまは王道のヒーローみたいで眩しいくらいに輝く道を彼は進む。時に仲間すら置いていくくらい。だけどいつかはまた仲間が追い付いて笑いあうのだろう。

私は独りなのに。


そうだ思い出した彼は本当に主人公なんだ。前世では確か漫画に彼の人生が描かれていたそれは全てではないかもしれないけど多くの彼のことを教えてくれた。

なんだ同情なんていらないじゃないか彼にはほとんど決まったレールがある。
過酷なことがあるだろうけど最後はきっと夢もかなってハッピーエンドが待っていることだろう。

私はモブとして作品にも描かれないどこかできっと無様に死んでいくのだ。

目から少しずつ光が抜けていく様を知るものは誰もいない。




(所詮私は物語の中の脇役でしかないんだ)
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