NO NAME

□元就の親友
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【持ち前の悲劇と始める喜劇。最後の感謝、死の淵からこんばんは】

人の人生って案外簡単に終わるもので。
人が生きると書いた人生。
俺が生きたのはどーしようもない人生だった気がする。

息を吸って吐き出す。
そんな単純なことも今の俺には出来なくて口からは血が溢れた。
ゴポリと口の端から流れ落ちる血液は遠くなる意識とリンクするようでどんどん体温が落ちていくのがわかるような気がする。
死にたくねぇな。
だれるように生きてきたがやっぱり死ぬのは怖いらしい。
指先の感覚はとうに消えて酔ったみたいに頭はふわふわする。
もう体に力は入らないが最後に残しておきたい言葉は「──────」。

俺はそのまま息を引き取った。









左右を確認上下を確認。
空は快晴。気分はまぁまぁ。地面には草が青々と生えてる。うん。いい天気だ。
軽い現実逃避とかいっちゃいけない。
突然の展開にお兄さんちょっとついていけてないだけだ。
とりあえず座っていた尻をあげて立ち上がる。手に着いてる腕時計。
時間を確認すれば12時丁度を指す。
特に意味はないがホッと息をつく。



「我が名は毛利元就!日輪の申し子よ!」
「…………?」
変な声が聞こえた気がする。
だが俺はあえて無視しよう。
なんか関わったら終わる気がする。

「ん?なんだ貴様どこから入った」
背後から声をかけられたような気がする。
しかし俺は振り向かない。
そのまま足を踏み出す。
「待て止まらねば切る」
チャキッなんてなんだ金属の音?ていうのかそんな感じの音がした。
きるとか言ってるけど刃物じゃないと信じてる。刃物こわい。刃物こわい。
「聞いているのか」
なんだか上から目線な気がする。
高圧的っていうか偉そうっていうか?
恐る恐る振り返ると俺よりは少しだけ背が低めのオクラがいた。
じゃなくて緑の人がいた。
なんだコスプレかレイヤーさんか。
ここはどこかのイベント会場か。
何も見なかったことにしてまた歩き出そうとしたら目の前にザックリと矢が刺さった。後一歩で足に刺さってたわこわい。

「なんだ」
いつもより声が低くでた。
どうやらだいぶびびっているらしい。
なんか緑さんに引かれた。
声が震えなかったのが救いか。
ちなみに答えたときちらっと振り返っただけで今は完全に緑さんに背を向けている。
背中からバッサーはないと思うけど、いや切られないよねうん大丈夫。
「ここで、何をしていた」
何を?何と言われても死んだと思ったらここだったとかいっても変なやつと思われそうだしコスプレイヤーの邪魔するわけにはいかないから…
「何も」
素っ気なくなってしまった。
しかしまぁ緑さんが僅かに目を見開いてる気がする。不遜な態度過ぎたか?
でもまぁそんな年は離れてなさそうだし多分平気だろう。多分。



「で?あ、そうなの?練習?名乗り上げのために?え、初陣?へー大変だねふんふん」
てわけでなんだかんだあって仲良く会話できる程度には話せるようになった。
どうやら最初は勘違いしてたらしい。
俺が怖く見えたとかできるやつにみえたらしいそんなわけないじゃんっていったらじっとみられて「…そうだな」とそっぽ向かれながら言われた。
もしかして信用ないかな。
まぁ、初対面だから仕方ない。
で、彼はどうやらもうすぐ初陣を迎えるらしくその為に鎧に慣れるのと大将戦のための名乗り上げの練習をしていたんだとか。
そうか偉いなと頭にぽんと手を置くとすぐに弾かれてしまった。





【悲劇と喜劇】

「お主は喋るな」
とか緑さん基毛利さんが言った。
なんでも俺の生活保護をする代わりに護衛的な役割をしてほしいらしい。
まだまだ信頼できる人が少ないとか。
だから俺が強そうな雰囲気だけでも出して周りへの牽制をして欲しいとか。
喋ったら全て無駄になるらしいけど。
つまり俺の見た目だけならビビらせることができるらしい。
そんな強面か?俺。
まぁ、帰る方法もわからないしどうすればいいかわかんなかったから保護してくれるってのは有り難いから従うことにしたけれども。

なので見た目からしてどうも年下にしか見えないが立場上彼の方が偉いらしいので一応畏まってみた。

「毛利元就様」
「うすら寒いわ」

吐き捨てるように言われた。
「…えー、じゃあなんて呼べばいいんだよ」
「形式的な場以外呼び捨てでよい」
「んじゃあ元就?」
「なんだ」
「元就」
「だから何だ」
「呼んでみただけ」
「…チャキッ」
「ちょっ!輪刀構えないで!もうしないから!」
ちょっとふざけたら輪刀で軽く叩かれた。
いくら切れる部分ではないとは言え鉄だから痛かった。
元就をからかうのは控えようと思う。
止めようとは思わないが。
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