英雄と呼ばれた男

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英雄と呼ばれた男

昔々、今になってはうっすらしか覚えていないような何年も前。
俺はたった一人だった。
仲間も家族も誰も居なかったあの頃。
俺に名前はなかった。
誰も信用することなく俺は猫を被って多くの人間を利用し騙してきた。
誰も俺の本性を知ることはなかった。
俺も他人を知ろうとは思わなかった。

小さなガキが一人で生きるには余りに過酷な環境で俺は生きた。
誰も俺を守ってくれる人はいなかった。
何もかもが憎かった。
世界を恨み大人を呪った。
生きるためなら何でもやった。
とんでもないクソガキだったあの頃。
一度死にかけたときがあった。
くそみたいな大人に死んだほうが楽なほどぶん殴られ傷つけられた。
意識も朦朧としてこのまま死ぬのかと
それでもくそみたいな世界からおさらばできるなら構わないと思った。
遠くなる意識のなかで幼い女が
俺のいる場所に似つかわしくないような女が俺に駆け寄ってきていた。
同情なんかくそくらぇだとそれでも痛みに意識を失った。

目覚めたときそこはいままで味わったことのないような柔らかなベットの上で。
少し動かしただけでも全身に激痛が走った。痛みに呻いていたときその部屋のドアが不意に開けられた。
そこから顔を出したのは意識を失う前に見た幼い少女だった。
俺が起きているのをみると嬉しそうに近づいてきて「大丈夫?」「痛くない?」なんて子ども特有の声でキャンキャン喚いた。
そんな声が頭に響いて思わず頭痛を訴えればガキは誰かを呼びにいった。
こんなところにいつまでもいられないとベットから降りようとしているとまたドアが開けられた。
先程のガキが浅黒い大男を連れ戻ってきたようだ。
ちっ面倒な。
思わず舌打ちをして二人を睨んだ。
大男には全く通じないようでずんずんと近づき少し乱暴に頭を撫でた。
「大丈夫か坊主!一応医者には見せたがどっか変なとこはないか?」
その言葉に俺は猫を思わず驚いた。
見ず知らずの子どもをベットに寝かせるだけでなく医者にまで見せるとは。
とんだお人好しに捕まってしまったようだ。


【英雄(幼少)と幼女】


お人好しに拾われて3日経つ。
何度も抜け出そうとするがその旅に浅黒い男が俺を止めたりガキが泣きわめくため出ていくことができないでいた。

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