英雄と呼ばれた男

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力を与えし

男を失った絶望の淵にいる女に声を掛けたのは俺の方だった。

恨みを深い絶望を、
声高々と叫んだ女に
甘く優しい声をかけた

容易く信じるようにと
全てを失ったのだと
絶望する女に
一人になってしまったときに
思わず頷いてしまうように毒のように
じわりじわりと
気づいたときには手遅れのようにと
寿命を引き換えに魔物の力を
元の姿には戻れない代わりに
復讐する力を
誰にも負けないようにと
何もかもを与えた。

男の時とは違う代償を貰って
世界を壊すための力を与えた。


女はいつしか姿を変えた。
諸悪の根源を復讐を果たした。
それでも、女の心は埋まらなかった。

女はいつしか引きこもり、
誰かを待った。

ただひたすらに表れるとも知らない相手を孤独に待ち続けた。

声はでなかった。
涙は枯れた。
唇の動きはいなくなった愛する人の名を紡いでいた。


何もいらない。
何も。

(だから、お願いあの人を返して…)

怪物に成り果ててしまった女は
誰にも知られずそっと
朽ち果てた。

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