英雄と呼ばれた男
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英雄の娘
私には片手で数えられるほど小さな時、
父親がいた。父は村の英雄で石像が建つほど有名人だった。
父の記憶はほとんど覚えてはいないけれど優しく笑う人だということだけは覚えていた。
父は私の誇りだ。
昔に魔物から世界を救った勇者で英雄で恥ずべきことなんて何一つない自慢の父だ。
父がいないことは寂しくないわけじゃないけれどそれでも誇りに思っていた。
母に父のことを聞くと寂しそうに笑うだけだった。
そんな母は再婚しなかった。
最初は私に遠慮しているのかと思ったけれど母は父を愛していた。
英雄と呼ばれる父はそれほどの人だったのかと分かるような気がした。
わかった気になっていた。
私は生涯気づかなかった。
母がどれだけ村人を人々を民衆を恨んでいたのか呪っていたのか。
私には知り得なかった。