書殿

□訪零
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『私を追放したこの世界に、貴方たちに、快く協力するとでも────?』




その言葉に、零の表情が強ばる。嘗て彼らが遂行した"正義"を、忘れた訳がない。
彼女がそれを憎んでいるのは言わずもがな。


「言うと思ったわい...じゃが、そうするしかなかった...王の御意志には何人たりとも逆らえぬ」


『まるで、自分たちはそんな気はなかった、と言ってるみたいね』

「初めからそう言えば信じたかノ?」

『全然』

「お主は"追放"のおかげで時守の力を得た────不覚にも、な。」

『何とでも言えば...?私に守られるだけの存在だというのに...』


一人一人が護廷十三隊以上の戦闘力を有していながら、それを使うことはせず、"御意志"に振り回され続ける可哀想な人たち。

零とは果たして名誉なのか。



「まあ考えてみよ、遅かれ早かれ何れは来たる事...」


兵主部の言う通り、このまま進行すれば"時守"として黙っていられなくなる。私情を持ち込むことも許されず、調和のためにこの手を加えることになろう。

それを見越しての、綾美の瀞霊廷入りの全会一致。
居ない間によく練ったものだ。ここまで携えてきた苛立ちが更に大きなものとなり頭へズルズルと上がっていく。


が、そこで終点となった。



『私のやり方でやる』



この男との議論は疲れる。
苛立ちよりもここから早く帰りたいという欲が勝ってしまった。

大内裏は元々好きじゃない。
いや、大嫌いだ。


そう言うと綾美は来た道を戻り始めた。
表情はなく虚ろな光の違う瞳。
苛立っているのに何も変わらない、神経が通っていない無機物で成っているような顔で。


「─────」


彼女がスッと消えるまで気は抜けなかった。
皆の背に、額に、良くない汗が流れる。
この5人でさえ、彼女とこうして対峙して論弁するのは極度の神経を使う。
覚えたての箸で豆を握る様な。
はたまた寝ている獣を起こさずやり過ごす様な。


──────上手く転んでくれ


そう願うばかりだ。
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