書殿
□苦受
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「我々は先程聞かされここまで態々急ぎ集ったんだが?」
少々苛立っている小柄な女、砕蜂が横口を挟む。
「まあまあ。と言っても、僕から説明出来ることなんて知れてるんだけどね」
「そんな得体の知れない奴を、良く平気で受け入れたもんだな」
目は合わせない。
小言のようにボヤく冬獅郎、その声は重い。
「────零番隊の決定だよ」
「「「!!!」」」
霊王宮の守護を務める零の名が出た途端、皆の顔色が一変した。
「10年前、僕達は死闘の末に多くの同士を失った。街は復興できたとしても、欠けた力は戻らない。そこで、彼らが彼女を呼び寄せたんだ。王の意思が途絶えたのは周知の出来事、今は零番隊が采配を取ってるって訳さ。」
「単に言えば戦力の穴埋め、かネ」
「そうなるね....でも事実だろう?もしまたあのような厄災が降りかかったとして、満足に動けるかい?」
「....」
誰も反論しない。
どの隊も多大なる犠牲者を出した。新たに着任した死神だけでは到底賄えない"数"と"隊力"────
『私はもう何百年と、瀞霊廷と関わっていない
』
黙っていた主役が口を開く。次の言葉を待つように、全員の呼吸が一度止まった気がした。
『でも、理由は"まだ"話せない』
まだ
ということは、いつかは明かされることなのか。
今語れないのは、護挺が信用に値しないから?
口止めされているから?
それぞれに多種の推測が飛び交った。
「兎に角、時が経てば何かが変わる。今は瀞霊廷の為にとやかく言ってる暇なんてない。それが護挺だ。」
春水だって言いたい事は山ほどあるだろう。でもそれをせず総隊長として、"死神として"世界の在り方を考えている。
それが解らない程隊長達も腑抜けではない。
論議する者はもう、いない。
「分かってくれたみたいだね...流石は選ばれた12人だ。」
────因みに、彼女の所属はない。
護挺十三隊と独立した座場。これに対しても誰も反論しなかった。
そして場はお開きとなった。
綾美の護挺に対する評価は、思っていた通り最悪だった。