ドラクエ11s
□白い町と亡国の面影
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「ユーリちゃんは気付いてると思うけど。
アタシはこの町の出身で、領主の息子なの。
・・・アタシの本名は知ってる?」
肯定したユーリは伝える。
ジエーゴと会って色々な話をした時に、彼は旅人の自分にこう言っていたと。
「もし俺のドラ息子。
ゴリアテに会ったら、せめて手紙ぐらい寄越しやがれと伝えといてくれって」
ソルティコの町は丘の上にある。
ギリシャにあるサントリーニ島のように、海へ向かって下るような町並みだ。
大水門を開閉する機関がある、ここ要塞門広場からは美しい海が見える。
月明かりがあるので以外と明るい。
「・・・そっか、パパがそんな事を。
心配してくれてたのね・・・」
シルビアは海を眺めながら語りだす。
子供の頃から騎士になるべく徹底的に鍛えられた自分は、ずっとこの町で騎士として生きていくものだと思っていた。
そんな時にサーカス団がやって来た。
何の運命か、現役時代の亡き母をよく知る友人が率いるサーカス団だった。
そのショーがとにかく面白くって、不思議と身体の中からチカラが湧いてきた。
自分はサーカスの力に魅せられたのだ。
「そしてアタシは確信したわ。
笑顔は人を強くする!
アタシの騎士道はこれだ!ってね」
居ても立っても居られなくなり。
今の自分に必要なのは旅芸人の修行だと父に打ち明けたら、当然のように反対された。
その時に言ってやったという。
世界中の人たち皆を笑顔にできるような、自分にしかできない騎士道を極めてやると。
「それまで絶対に帰らない!
・・・って、屋敷が壊れるくらいパパと大喧嘩して、アタシはこの町を飛び出したって訳」
一気に話して疲れたのか。
それとも隠していた事を話せてスッキリしたのか、シルビアは一息つくと。
センチメンタルな話をしたが、皆に聞いてもらったら何だか勇気が湧いてきた。
明日、父に会ってみると言った。
「ユーリちゃんもパパからの伝言・・・
ありがとうね」
「いいえ。
お話、ありがとうございました」
ユーリが礼を告げたので。
イレブンたちも異口同音に礼を言った。
彼女と共にいると。
なんか礼儀正しくなるなと、育ちが良いとは言えない自覚があるカミュは思った。
そして一行は宿屋に泊まり。
朝を迎えた!
「シルビアさん、大丈夫ですよ。
さぁ、勇気を出して」
翌朝、町一番大きな屋敷が領主の館。
とのことでシルビアが道案内を買っていたが、大きな白いアーチが見えてきた段階から。
その歩みの速度が遅くなり始めて・・・
「そ、そうよね・・・
ああ、やっぱり怖いわ!
ユーリちゃん、手を繋いでてもらってもいいかしら」
「え、はい。いいですよ」
そんなやり取りを終えた年長2人は。
ユーリを前に歩かせて、長身を縮こませているシルビアを眺めながらカミュが。
まるで歯医者に会いに行くのを怖がるガキじゃないか、と感想を言った。
「そんなにお父さん・・・
ジエーゴさんが怖いのかな」
イレブンがぽつりと言った。