外殻大地

戦うということ ‡ セントビナー
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戦うということ




「イオン!?」


セントビナーへ続く街道。
そこをステラたちは歩を進めていたが、不意にイオンが膝を着いた。

心配したティアが。
「大丈夫ですか?」と傍にしゃがむ。


「イオン様。
 タルタロスで、ダアト式譜術を使いましたね?」

「ダアト式譜術?」


ルークはジェイドを見るが。
答えたのはステラ。


「導師のみに受け継がれる能力で・・・
 譜術と体術を融合させた、ダアトが開発した武術だったと思うけど・・・」


ローレライ教団の総本部がある街・ダアトは。
教団の前身を創った初代導師、フランシス・ダアトから名付けられた。

ユリア・ジュエを裏切った人物としても・・・
その名は知られている。


「すみません、僕の体は・・・
 ダアト式譜術を使うようには出来ていなくて・・・

 ずいぶん時間も経っているし・・・
 回復したと思ってたんですけど・・・」


と告げたイオンの顔色は青かった。
呼吸も浅くて苦しそうである。


「少し休憩しましょう。

 このままでは。
 イオン様の寿命を縮めかねません」


ジェイドの提案で。
休憩を取ることになった。

馬車も通る街道から外れた場所に。
各々座る中、ステラは早速ポーチから、


「はい、アップルとオレンジグミ。
 少しは元気になると思うから」

「ステラ・・・
 ありがとうございます」


受けとったイオンは早速。
体力回復効果があるアップル、音素(フォニム)回復のオレンジグミを口に入れた。
ちゃんと食べたのを見届けたステラは、そのまま隣に座り・・・
新たな同行者となるガイに、これまでの経緯を皆で説明した。

ローレライ教団で繰り広げられる。
導師派≠ニ大詠師派≠ニいう、預言(スコア)への考え方の違いによる派閥争いのこと。
大詠師モースよる軟禁からマルクト軍の力を借りて、イオンは脱出したこと。

エンゲーブでルークとティアを拾い。
チーグルの森で、ミュウを連れていくことにしたことを。


「・・・戦争を回避するための使者って訳か。
 にしても、秘預言(クローズドスコア)ってのは――」

「気分が悪いと言ってもいいですよ」


言葉を詰まらせるガイに。
イオンはそう言った。

秘預言という用語は。
タルタロスでの一件で露見したが、その預言内容までは教えてはいないので。
イオンの中ではセーフの扱いだ。


「僕も正直モースの・・・
 大詠師派のやり方には、思うところがありますから」

「預言が絡もうが。
 戦争は回避するべきです。
 モースに邪魔はさせません」


ジェイドがそう言ったが。
モースの部下のティアは、何も言わなかった。

預言の扱いに対して。
疑問を抱き始めているからである。




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