ドラクエ11s
□火の里と砂漠の国と貿易港
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「ホメロスちゃんって熱心ねぇ」
町長宅の3階の露台から。
望遠鏡で町を見渡していたシルビアは、円形広場にホメロスが立っているのを見た。
夕暮れにはあそこで指揮していたので、今日最後の巡回といったところか。
表通りには兵たちがチラホラいて。
ホメロスは町の入口から続く大通りを一望できる場所に立っているが、水路を使えばその入口がある崖側へ一気に行ける。
そこから商店区画の裏側にあるドッグへと、道なりに進めばいいのだ。
「よ〜し、行くわよ!」
シルビアの船があるドッグは。
こっそり開けてあるようで、配慮してくれた町長夫妻に礼と別れを済ませて。
イレブンとカミュを兵に見つからずに、目的地へ向かうという緊張を伴う移動が始まった。
念のため2人には。
あちらが持っている情報から逸らす格好をしてもらっている。砂漠の民の服装だ。
これで遠目では判らないだろうし、もし見付かったらプランその2に移行だ。
シルビアが漕ぎ手となってオールを漕ぐ。
全員が息を潜めるように水上の迷宮≠ニ別名があるダーハルーネの水の路を行った――
「見つけたぞ!
イレブンとカミュだ!」
似顔絵をよく覚えていたのだろう。
6人で足早く歩いている所に、兵とバッタリ遭遇してしまった。
当然、事情を説明して納得しかけたが、イレブンとカミュの顔をじっくり見られてしまい・・・
大声を上げられて笛まで吹かれた。
「プランその2!
みんな集まって!」
ちゃんと5人が傍にいるのを確認して。
ユーリはキメラの翼を放り投げたすぐ後、笛の音を聞きつけた兵たちと、
「ホメロス様!
イレブンとカミュは、仲間と思しき者たちとキメラの翼を使い逃げました!」
「翼はどんな奴が使った?」
「黒髪の少女です。
着物に似た独特な服を着ていました」
ホメロスは直感的にユーリだ。
と思ったが、努めて冷静に目撃した兵に問う。
他には誰がイレブンの傍にいたかと。
旅芸人らしき男と。
姉妹らしき金髪の少女ら2名に、黒髪の少女とカミュを合わせて計5人。
どこへ移動したかは判らないとの事。
「やれやれ・・・
私もグレイグと同じく、寸前のところで逃げられるとはな」
勇者という存在は。
何とも運が良いようだとホメロスは思った。
どうかそのまま逃げてくれ。
ウルノーガの魔力の侵食で体は魔物となってしまったが、心まで堕ちたくはないのだ。
いや、堕ちかけていたのを救ってくれたのは・・・
(君はまさか・・・
大樹の巫女≠ネのか?)
ユーリが背負っていたあの弓は。
淡く光り続けていたその光は、己にしか視えていない様だった。
2023/5/4