外殻大地

チーグルの森 ‡ タルタロス
32ページ/32ページ


46




「・・・わかった。
 不用意にあなたに近付かないようにする。
 それでいいわね?」

「すまない・・・」


やっと震えが止まったガイは。
背を向けたティアに、情けない顔で謝った。

考えていた以上に重症である。


「そろそろここを離れましょう。
 セントビナーへ行けば、少しはゆっくり休めます」


と空気を変えるようにジェイドが言った。
確かに、ここは危険だ。


「そちらさんの部下は?
 まだこの陸艦に残ってるんだろ?」


ガイの問いに。
ステラは静かに目を伏せた。


「生き残りがいるとは思えません。
 私たち以外」

「・・・何人、乗ってたんだ?」


ルークは勇気を出して訊いた。


「今回の任務は極秘でしたから。
 最低限の人数――100名ほどですね」

「100人も殺されたってことか・・・」


ガイが苦しげに呟いた。
それを聞いたイオンは居たたまれないように、


「・・・ジェイド、すみません。
 僕のせいですよね」

「あなたのせいではありません」


ジェイドは断言した。


「我々の妨害をしたモースのせいです。
 イオン様には悪いですが、この事はローレライ教団に抗議します」

「はい、お願いします。
 モースのやり方は・・・目に余ります」


温厚なイオンも。
流石に怒っているようだ。

生まれてから約2年。
外面の導師イオン≠フ言葉使いと礼儀作法が刷り込みされている。
トップとは名ばかりの傀儡、と聞いていたが・・・


(もしかしてこの子。
 結構、芯が強いのかしら・・・)


そして優しい性格だ。

このイオンになってから付いたという。
アニスの影響なのだろうか。


(・・・ん?
 アニスも2年前・・・)


その時のアニスの年齢は12の筈・・・
幼年で士官学校に入った場合、卒業するとその年齢になる。


「行きましょう。

 私たちが捕まったら。
 もっと沢山の人が戦争で亡くなるんだから・・・」


ティアからの言葉にステラは。
思考から現実へと戻った。
そして一同はタルタロスから離れて、セントビナーへ続く街道を目指す。


(お父さんに調べてもらおうかしら)


20140825



次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ