烏野高校排球部

□好き(東西)
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頬に触れる手に徐々に愛おしさが込められていくのを、西谷も感じ取る事ができた。

この暖かな大きな掌に包まれるのは嫌いじゃない。

男の手だと分かっていても、それが東峰であるなら西谷にとって特別な手だからだ。

すぅっと目を細めて頬に伝わるその感触に集中すると、どれだけ愛されているのかが実感できる。



こんなに好きでいてくれるのに、なんでこの人はこんなに自分にビビるのかが西谷はいまいち不思議で仕方なかった。


さっきもそうだ。

近寄ると逃げる、止まると急に不安そうな顔になる。

しばらくじっとしてるとやっと落ち着いて俺を見てくれる。

そろそろ慣れてくんねぇかな、旭さん。

まあ、もう俺は慣れたからいいけど。




西谷の頬を撫でる東峰の手が徐々に大胆になっていく。

東峰の強張りが取れたのがわかると、西谷はそのまま東峰の胸に甘えるように頭をつけた。

一瞬だけ戸惑いを見せた掌は頬から首の後ろへとゆっくりと移り、もう一方の手も西谷の細い肩を大事そうに抱えこんだ。

東峰はやっとの事で恋人らしい事ができたことに、達成感というか一仕事終えたような気持ちになった。




そんな心地好い空気の中、西谷がおもむろに口を開いた。

「ねぇ旭さん」

「ん?」

「旭さんは、なんで俺を好きになったんですか?」

自分の身体より一回り大きい腕の中に抱かれながら、西谷が唐突に聞いてきた。

その肩を愛おしげに撫でていた大きな手がピタリと止まって、空中で何かを探すように小さく動いた。

「ど、どうして急にそんな事?」

「だって気になるじゃないですか。普通に考えてありえないでしょ?男好きになるって」

「お前がそれ言う?」

「俺の事はいいんです。旭さんの話が聞きたいんです」

「ずるい」

「ズルくないです。だって、俺は高校入ってからずっと旭さんが好きだけど、旭さんには俺がいない一年があるじゃないですか。その間にも可愛い女の子とかいっぱいいるじゃないですか。告白されたりとかなかったんスか?それとも元から女の子には興味なかったんスか?」



矢継ぎ早にいろいろスゴイ事を言ってくる西谷に東峰はどこから突っ込めばいいのか、もはや元の質問はどれだったのかさえわからなくなるとこだった。

「とりあえず、男を好きになったのはお前が初めてだよ」

恥ずかしさのあまり視線を合わす事もできなくて、東峰は悩んだ末にようやく無難な答えを絞り出した。

「俺もですよ」

それに対して、西谷は即答だった。
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