烏野高校排球部

□存在(東西)
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桜の花びらが散り始め新緑の季節になったといっても、この時期の夜はまだ冷え込む。


それでも、ハードな練習の後の風呂上りにはちょうどいい気温だった。


合宿所の外のベンチは森に面した人気のない場所にあった。


俺はよくここに座って、先輩に見つからないようにボケッとしてたもんだ。





合宿前。

俺と大地はスガに呼び出された。

結構ヘビーな内容だった。


一ヶ月もサボってフラッと戻ってきた俺にとっては、胸をえぐられる話だった。

俺とスガではポジションも違うし、役割も違う。

だから、あいつがそう覚悟を決めたのなら俺には何も言うことはない。


それでもショックだった。


俺たちは丸々2年間一緒のコートでやってきたし、残りの時間もそれを疑わなかったからだ。

さっき、たまたま監督とスガのやり取りを聞いてしまった。






大地は。

大地はとても辛そうだった。

主将としての立場と、ずっと一緒にやってきた仲間の気持ちと、個人的な想いが入り混じって泣きそうな顔をしていた。

だから俺は、大地を一人にしてやりたかった。

いや、いまごろ二人で話してるのかもな。





ざあっと強い風が吹きぬけ、俺の長い髪を弄ぶ。

まだ少し湿っている髪を掻き上げると、ちょっと冷たかった。

木々の間から星が見える。

今日は空気が澄んでいていつもより星がたくさん見えた。

「はあ」

意味もなくなんだか大きなため息が出た。

「旭さん」











びっくりした。

心臓が口から飛び出るくらいびっくりした。

びっくりすぎてベンチから転げ落ちるかと思った。

「なななななな、、、」

声の方をみると、同じく風呂上りっぽい西谷がいた。

「ににいににっしのっ、やっ!なっ、なに?」

「・・・」

いつもは賑やかな西谷だが、時々じっと凝視するときがある。

その視線に、俺はますます動揺を隠せない。

「なっ、なんでここに?」

「大地さんに教えてもらいました。きっと旭さん、ここにいるからって」

「あ・・・そう、」

大地も俺に気ぃ使ってくれてたんだな。

一人にしているつもりでも、大地も俺をひとりにしてくれていたってことだ。

っていうか、なんで西谷に教えるんだよ。


「大地さんに言われました。旭さんを励ましてやれって」


西谷も髪を下ろしてるからいつもみたいな威圧感はないけれど、まっすぐこっちを見ながら近づいてくると自然と後ろに下がってしまう。

「なんか、あったんスか?」

「あー・・・」

すごく気まずい。

どうしよう。どうしよう。

やばい、西谷こっち来る。どどどどどどうしよう。

「隣、いいスか?」

「あ、うん。いいよ」

俺が断れるはずもなく、スッと端に寄って西谷の場所を開けた。


すとんと隣に落ち着くと、西谷は視線を外した。
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