夢小説【ダイヤのA】

□糸 ~成宮 鳴の場合~(前編)
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なぜ めぐり逢うのかを
私たちは 何も 知らない
いつ めぐり逢うのかを
私たちは いつも知らない・・


なぜ、出逢ったんだろう?
あれは、ただの偶然だったのだろうか?



以前、リハビリテーションの病院に勤めていた事があった。
廊下にしゃがみ込んでいた男の子に、気が付いたら話しかけていた。

「君、名前は?」

小さな声で、その男の子は答えた。

「成宮 鳴・・・」

それが、私と成宮 鳴の出逢いだった。

その数ヶ月後、私はカナダへ行ってしまったのだが。

まさか、再び、成宮 鳴と逢えるとは、思っていなかった。



どこにいたの 生きてきたの
遠い空の下 ふたつの物語



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3年後・・・


私は、恩師に会いに学校を訪れた。

「監督、お久しぶりです」

稲実の国友監督が、実は恩師だ。
高校は違ったが、大学でお世話になった。

監督は、相変わらず表情を崩さずに答えた。

「夏目、生きてたのか?」

「監督、酷いです・・ご無沙汰してたのは、悪かったと思いますけど・・(笑)」

などと、やり取りをするのが日課のようになっていたので、お互い楽しんでいたのだが、周りの生徒達は驚いた顔をしていた。

(あぁ、監督の冗談なんて、滅多に聞けないんだろうな・・)

その生徒の中に、ひときわ驚いた顔をして、こちらを見てる生徒が一人。

「・・・倫子先生⁉︎」

私の名前を呼びながら、もの凄い勢いで、こちらに駆けつけた。

「成宮、アップは済んだのか?」

監督は冷たく言い放つが、お構いなしだ。

「はい・・・済んでます」

目線は、私の方に。会話は、監督の方へ。
器用な事をやってのけた。

「成宮、お前、夏目と知り合いなのか?」

「・・・はい、昔、リハビリを受けていた頃、会った事が・・」

かなり、驚いた顔をして、私を見てくる。
私も久しぶりすぎて、返答が遅れたので悪いと思い、成宮くんに話しかけた。

「本当に久しぶりね。元気?あれから具合は、良くなった?」

「・・お陰さまで・・その節は、ありがとうございました」

呟くような声で、答えた。

すかさず、監督が

「いつもの元気は、何処へ言った⁉︎声が小さいぞ、成宮!」

「・・・すみません」

いつもの元気がないとかで叱られている成宮くんを見て、他の部員達まで変に思ったらしく、ザワついている。

「国友監督、まあまあ!久しぶりに私なんかと会って、ビックリしたんでしょ。仕方ないですよ!」

わざと、あっけらかんと、答えてみる。
そして、報告だけして、サッサと帰ろうかと、考えていた。

「そうそう、報告があったんですよ。実は私、2学期から青道で保健医をする事になりまして。今日は、挨拶に来たんですよ」

そう言うと、国友監督を筆頭に周りの生徒が、一気にザワついた。

「青道⁉︎」

まぁ、聞いていたけど、ライバル校の名前を聞けば、仕方ない反応だよね。

「すみませんね・・あそこには、知り合いがいるもので、その・・恩返し的な?」

「あぁ、片岡監督と幼なじみだったよな。あと、母校に恩返しか?」

「まぁ、そんなところです」

国友監督の言葉に周りのザワザワは、酷くなった。
成宮くんも、なぜか蒼ざめてる。
どうしたんだろう?

「成宮くん?どうしたの?」

「・・・倫子先生も、青道へ行ってしまうんだね」

「えっ?」

その言葉の意味に、その時の私は気付く事ができなかった。
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