第三書架(夢)
□お昼寝
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「ん……あれ?」
いつの間に寝ていたのだろう。いや、寝る気ではあったのだが、気づいたら眠ってしまっていたようだ。
「あ! グラン、起きた!?」
「うん……ん? ……え?」
聞き覚えのある声。そういえば寝る前にヴァンピィが一緒に――
僕はそこまで思い出してすぐに目を開けた。寝起きのぼやける視界の中に、一人の少女がこちらを覗き込んでいるのがわかった。
逆さまに映るヴァンピの顔。いわゆる膝枕というものである。咄嗟に起き上がろうとしたが、顔面衝突してしまうと思いすんでのところで思いとどまった。
後頭部には程よい温かさと柔らかさを感じ、起きたばかりだと言うのにそれがまた眠気を誘っている。
そして数秒後、ようやくくっきりと鮮明に見えるようになった。すると目と鼻の先にはもうヴァンピィがいた。
僕は驚いて声をあげるのをこらえ、息がかからないように小声で言った。
「ヴァンピィ、近い」
「……グランは近いの、いや?」
「嫌……じゃないけどさ」
「ならいいじゃん!」
ヴァンピィは満開の笑顔でそう答えた。
別に嫌ではない、のだが誰も見ていないとはいえど恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
だからって言い返せるわけもなく、少しの間沈黙が続く。
ヴァンピィは僕の頭を撫でながらニコニコとしている。そんなヴァンピィに僕は問いかける。
「なあ、ヴァンピィ」
「んー? なーに?」
「ずっと僕の頭を撫でてるみたいだけど、楽しい?」
「うんっ! グランの頭撫でるの、すごく楽しーよ!」
「さいですか……」
未だ笑顔のままのヴァンピィを見て、僕は抵抗する気は起きなかった。