第三書架(夢)

□お昼寝
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 ある日の昼下がり、日課である鍛錬を済ませ暇になった僕は草原に横になって空を見ていた。
 そんないつもどおりの日常。少し眠くなってきた。このまま寝るのも悪くないかも。そう思いながら僕はゆっくりと目をつむった。

「あっ! グランいた!」

 この声はヴァンピィだろう。いつもだったら返事をしてやるのだけれど、今日はこのまま寝てしまいたい。ここは申し訳ないけれど、気づいていないふりをして眠ってしまおう。
 そんな気持ちを露ほども知らないヴァンピィ。恐らくはすぐ傍にいるんだろう。

「あれぇ……? グラン、眠っちゃってるのかな……?」

 程なくして、そんな小さな声が耳に届いた。

「むぅ……。今日こそグランをけんぞくぅにしようと思ってたのにぃ……」

 それは勘弁してください。ヴァンピィから飛び出す物騒な言葉に密かに動揺しつつ、聞き流して惰眠にふける。

「ふあぁ……。なんだかヴァンピィちゃんも眠くなってきちゃった……」

 そう聞こえたあと、僕の左手に重みを感じる。それと同時に甘い良い香りが鼻孔をくすぐった。
 これはもしや……。そう思って薄目を開けてこっそり左側を見る。そこには一緒に寝転がるヴァンピィの姿があった。

「えへへ……おやすみぃ、グラン……」

 そう言ったかと思うとヴァンピィはすぐに規則正しい寝息を立て始めた。

「はぁ、どうしてこうなったんだか……」

 まあ、自業自得か。そう判断付けて静かに笑う。そしてまたヴァンピィの方を見た。いつもの活発な少女の姿は完全になりを潜め、その普段は見せないような表情、愛らしい寝顔に思わずドキッとする。
 自然と空いている手でヴァンピィの頭を撫でていた。綺麗な金髪に沿うように右手を動かすたびに見せる幸せそうな笑顔に、僕は気づけば夢中になってしまっていた。
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