第一書架

□○○は狂っている
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「やっと終わったよ〜!」

 時間も経ち日が暮れてきた頃。友達が固まった体を伸ばしながら疲れた声でいった。

「そうだなぁ......」

 俺は素っ気なく返事をする。大学の講義がようやく終わり、友達はそのテンションのまましゃべりかけてくる。この友達とは高校の時からの知り合いで、同じ大学に通い始めてから更に仲が深まったやつだ。
 身長はあまり高くなく、俺の肩くらいしかない。髪は肩に掛かるくらいで、身長のことを言うとプリプリと怒る可愛い奴だ。絶対にそんなこと言わないが。
 ついでに言えば胸が大きい。その容姿と相まって高校生の時からいろんな男共を虜にしてきた女だ。本人はそれに気づいていないが。

「ねぇ〜、今日どっか遊びにいかない?」

 そんな提案を俺にしてくる友達。

「あー......遠慮しとくよ」

 それを俺は苦笑いで断った。友達はぶー、といいながらあからさまにすねてくるが気にしない。
 経験上この誘いに乗ると面倒なことになることを知っている。ただでさえ人気の女性なのだ。断ったことでさえ広まると大変なことになるのに、一緒に出かけたとなれば更に大変になることは目に見えている。

「また家の事情?」

「んー、まあそんなとこ」

 まあどっちにしろ苦労するということだ。なら俺は楽な方を選ぶ。

「また今度な」

「......うん」

 俺がそう言うと友達はやや不機嫌そうにうなずいた。そんな彼女の頭にポンと手を置いて、僕はココロの中でごめんと言ってくしゃくしゃとなでた。
 きっとまた今度が来ることがないとわかっているのだろう。そんな思考を隠すように俺は無理矢理に作り笑いを浮かべた。
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