第二書架(夢)

□相寄れないから近づく
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 コツコツコツと、快活が館な足音が館内を響いた。血のように真っ赤な廊下なんて、小さい頃からここに住んでいた僕にはもう気にすることではない。

 執事服に身を包ませ、粗相が無いように襟を正す。僕は地下への階段を更にコツコツコツと降りていく。

「大丈夫かな……今日は」

 そう考えていたところで、きっと無意味なのだろうことはもうわかっていた。
 だからといって考えないことも、当然身構えないこともありえない。身だしなみを整え、僕は目の前にある大きな扉をコンコンコンとノックした。

「フラン様? 僕です、名無しです」

 ノックした状態で数秒待つ。

 ……返事はない。果たしてまだ眠っているのか、それとも――いや、そんなことを考えていても仕方がない。

「開けますからね……では、失礼します」

 僕はお構いなしに扉を押し開けた。ギィという音を立てて開いた先には、可愛らしい光景があった。ピンク色に可愛らしい柄をしたベットと、そこら中に敷き詰められたぬいぐるみ。
 この部屋にいる者の年齢や心がよく分かる部屋だと思う。

「フラン様、どこですか?」

 今日は何やらおかしい。前ならベッドに潜って僕を驚かせたり、急にタックルを決め込んだりしてきたのに。

「レミリア様のところにでも行ったのかな……」

 それならば仕方がない。今回は起こすことが目的のため、それは達成したのだから良しとしよう。僕は部屋に背を向けて歩き出す。

「ぐへぇ!」

 しかしその行動は横っ腹へのダイレクトアタックによって止められた。あまりの痛みに思わず素っ頓狂な声が漏れる。僕は衝撃に従うように転倒した。

「ふふふ! 名無し、おはよっ♪」

 うっすら残る意識と力で何とか顔を上げその衝撃を与えた主を見る。そこには宝石のような翼を輝かせた、金髪の吸血鬼が満面の笑みでそこにいた。

「お、おはよう……ござい……ます……」

「え、え? 名無し! 大丈夫!?」

 当然のように満身創痍な僕の体。驚いてすぐに駆け寄る我が主。だらしないなぁ、ほんと。
 心配そうにするフラン様をうっすらと眺めながら、僕の意識は遠のいていった。
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