腹黒王子と毒舌王女
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男達は及川に怯み、逃げ出そうとして岩泉達にボコボコにされた。
金田一が携帯を取り戻し、国見が冷静にカメラを奪いデータを消去した上に没収する。
そして男達は情報を及川に話した後、慌てて逃げて行き、倉庫には俯いて動かない自分と、及川達だけが残っていた。
「…莉子ちゃん…」
「…ッ!」
及川に呼ばれて身体がビクつき、身体が震え出す。
静かに近づいてくる気配を感じてギュッと目を瞑った。
「来ないでッ…!」
「莉子ちゃんッ…!!」
身を竦め、震えを止めようと身体を自分で抱きしめるとその上から力強く抱きしめられた。
一瞬、先の恐怖が蘇り息ができなくなる。
そして抱きしめているのが及川だと頭が理解すると、パニックが治まっていく。
「ごめん…莉子ちゃん……ごめん…」
「なんで…謝るの…」
「…ッ…俺のせいだから…」
「莉子。及川さん、お前がイジメ受けてたの、全部知ってた」
ギュッと抱きしめてくれている及川の体が少し震えている。
珍しい事もあるんだな、と妙に冷静になると、国見が近づいてきて話し始めた。
「登下校も、昼休みも、莉子が嫌がらせをされない様にする為に莉子の元に来てたんだ」
「え…」
「目の届くところにいて欲しくてさ…ごめん、莉子ちゃん…」
体を離しながら申し訳なさそうに俯く及川をポカンとした顔で見上げる。
(知ってた…?全部…?)
必死に隠してた自分は何だったんだと心の底から感じると同時に、ずっと守られていたことに気づく。
「莉子ちゃん。俺、今からすごく卑怯なこと言う」
「…え…?」
「俺と付き合ってよ、莉子ちゃん」
「!?」
「「「はァ!!!???」」」
及川の一言で自分以外の声が一気に聞こえた。
当の莉子は目を見開いたまま固まって反応できなくなっていた。
「こんな時に何言ってんだクソ及川!
テメェ莉子の状況理解してんのかよ!」
「してるよ!!でも!!
“幼馴染み”や“マネージャー”のままじゃ莉子を守れない!!!!」
及川は拳を握りしめ、珍しく声を荒げた。