青の騎士と護られ姫
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-莉子side-
それから2日後、事件自体は停学で話がつき、ブレザーやカッターシャツも弁償してもらうことになった。
ただ、岩泉とは一言も話せていないまま日が過ぎ上級生達に“負けない”と言っておきながら、すでに心が折れそうになっている。
(…今日こそは、ハジメ君と話したい…)
「…頑張れ、私…」
「莉子ちゃーん?どしたの?」
「えっ!?いや、何も〜?」
(良かった、聴こえてなさそう…)
小さく呟くと後ろから及川に話しかけられ慌てて両手を振る。
気を遣ってくれているのか、及川は頻繁に顔を出すようになり、部活中もよく話しかけてきてくれていた。
「…今日こそ岩ちゃんと話せるといいね?」
(聴こえてた!絶対聴こえてた!!!)
「…私、徹君のそういう所が嫌い〜」
「ちょっと!!今のキュン!ってするとこ!!」
「あはは、私にそれ求めるの〜?」
「もー!莉子ちゃんのバーカバーカ!!」
ニコニコとしながら話す及川の発言に性格の悪さと優しさを感じ、いつも通りにニコニコと返すと喚き出す。
ぐいぐいと及川の背中を押すとべーっと舌を出して練習へと戻っていき、岩泉以外の部員が苦笑してその様子を見ていた。
好きだと気付いてから自然と目で追いかけてしまう癖がついたのか、レシーブ練習を終えた岩泉をジッと見つめていたらしい。
「……」
「あ…」
バチッと目が合い、驚いてキョトンとすると、同じく驚いた岩泉が気まずそうに目線を外して背を向ける。
ズキンと痛んだ胸と、傷を隠すように左腕に目を当てて顔を少し俯け、頭を振って気持ちを切り替えた。
*****
部活が終わり、門で岩泉を待つと及川と並んで歩いてくるところを見つける。
いきなり2人では気まずいと思い、及川には悪いが3人で帰ってもらおうと考えていた。
「あの…!ハジメ君!!い、一緒に…帰っても…いい…?」
「……及川、送ってやれよ」
「…岩ちゃん?なんで、3人で
「悪ぃ、俺今日は用事あっから」
チラ、とこちらに視線を寄越してすぐに逸らし、岩泉は足早にその場を去っていってしまう。
それを見て俯くと及川に頭を撫でられ、2人で歩き出し、なんとなく話す雰囲気ではなく、黙って歩いた。
「ねー、莉子ちゃんさー、岩ちゃんなんかやめて俺にしない?」
「…徹君…?」
「…なーんてね!あ、でもあんまりにも岩ちゃんが莉子ちゃんを泣かせるなら本気になっちゃうかも!」
「…ホント、優しいね〜、徹君…」
(ヘラヘラなんかしてないでいつもこうならいいのに〜)
家の前に着くと及川はニッコリと笑い、いつかの昼休みに話した時と同じ内容を口にした。
大事にしてくれる及川の気持ちは嬉しいが、岩泉への気持ちが大きすぎることを及川の言葉でまた思い知らされる。
「はぁ〜…ホント岩ちゃんってバカだよねぇ…」
「今回のことは、あたしが悪いよ〜?」
(話せないのは、寂しいけど…)
「もー!!莉子ちゃんってば可愛いんだから!!!」
力のない笑顔だったのか、岩泉の様にわしゃわしゃと頭を撫でてから「大丈夫、任せて!」と言って及川は帰って行った。