青の騎士と護られ姫

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「まーったく岩ちゃんってばわかってないよねー?」と言いながら殆ど残したお弁当を及川が食べてくれていた。


昼食が牛乳パンだけだったという及川にとって、多少味は悪くともお腹の足しにはなるだろうとガツガツ食べる及川を見て苦笑する。



「莉子ちゃんさー、岩ちゃんのこと好きなんでしょ?でもさ、俺も負けるつもりないからね?」


(?何??)
「何急に、徹君は言葉が足りないことが多いよ〜」


「俺もね、岩ちゃんには負けないってこと!ねぇ莉子ちゃん、岩ちゃんなんかやめて俺にしない?すーーーっごく大事にするよ!」


「「え、ちょっと信用が」」



ニコニコとしながらも岩泉との対立を言葉にする及川に眉を寄せるが、当の本人はそんな事には気にも留めずに話を続ける。


最後にニコーッと文字が出そうな程の笑顔で言った言葉に黙っていた真奈まで反応してシンクロしてしまった。



(大事にはしてくれそうだけど、その笑顔に信用性がない…)
「…ハジメ君の事も徹君の事も同じくらい大事で好きだから仲良くしてね〜」


「…莉子ちゃんの事なら隠しててもわかるよ。…ま、大好きな莉子ちゃんだから応援はするけど!」


「及川さん、大人になりましたね…」

「ちょっと真奈ちゃん!?今のヒドイよ!」



話し終えて困った様に笑った及川に何故か申し訳ない気持ちになってしまう。


はぐらかす為に言った言葉も、及川の反応からして効果がなかった上に、自分でもはっきりしていなかった気持ちを見透かされた気分だった。


そして及川の言葉で岩泉が好きだということ、その気持ちを恋だと認めたくないということ、3人の関係が壊れてしまうかもしれないという恐怖を自覚する。



「大丈夫だよ、莉子ちゃん!岩ちゃんはとにかく鈍いし奥手だから、莉子ちゃんからどんどん押すんだよ!」


「な…別に…今まで通りで良いよ…!」


「岩泉さんって同級生の人気高いって噂だし、とられるよ?」


「へっ…!?あ…あ〜…で、でも!とにかく!もう少し落ち着いてから行動する〜!!」



わたわたと手を振り及川や真奈に言い訳をしながら真っ赤になった顔を元に戻そうと深呼吸をする。


初めてしっかり自覚した恋の相手が岩泉だという衝撃はまだまだ治まってくれそうになかったが、及川や真奈のお陰で自覚できたことには感謝を述べた。



*****



午後の授業中に“積極的とはどうするべきか”という議題を自分の中で掲げて考えていたが、全くもって良い案も浮かばず放課後になった。


ドリンクを作って運び、練習に励む岩泉を見て自然に口元が緩み、話したくて体がソワソワとして落ち着かない。



「…莉子、体調は大丈夫か?無理すんなよ」

「へっ!?あ!うんうん!全然大丈夫になった〜!」


「……いや、ホントか?すげー怪しいぞ」


(普通に…!普段通りに…!)
「ね、寝不足だったみたい〜?午後の授業中ちょっと寝たらスッキリしたから〜!!」


「なら良いけど、辛くなったら我慢すんなよ」



眉を寄せて首を傾げていた岩泉がぽん、と頭を撫でた瞬間、ボンッと爆発音がする位の勢いで顔が真っ赤になり俯く。


岩泉本人は気付かず練習に戻っていくが、撫でられた部分を手で覆い、慌てて深呼吸をして落ち着かせた。



「莉子ちゃん、わかりやすすぎ!」


「う…普通にしようとすると全然ダメなんだもん〜…」
(好きってこんなにドキドキするんだ…!!)


「もー!俺がギュッてしたらきっといつも通
「絶ッッ対いりません」


「笑顔がヒドイ!!!」



岩泉と入れ替わりで来た及川は苦笑してコソコソと話しかけてくる。


普通に出来ない自分が情けなくて泣きそうな顔で及川を見るといきなり両手を広げだし、よくわからないことを言うため笑顔で断っておく。


散々「ヒドイよ!?」と喚いたあと、コートへ戻る直前になって「ほら、いつも通りでしょ?」と言いながらウインクを飛ばして戻って行った。


(本当だ…落ち着いた…)
「なんか徹君って…すごい…」


及川に言われて煩くなっていた心臓も、真っ赤になっていた顔も落ち着きを取り戻していることに気づき、ポツリと独り言を呟いた。
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