青の騎士と護られ姫
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及川の提案通りに3人でメニューの相談をしながらクレープ屋に並ぶ。
甘いものが好きな為そうそう決められそうになく、優柔不断な及川と2人でずっとメニューと睨めっこを続けていた。
「俺席とってくるわ。莉子、テキトーに頼んどけ」
(適当!?)
「え!?そんな、難しいよ〜っ」
「お前の食いたいモン買えばいい。分けてやっから心配すんな。あと、これ金な」
「わっ、もー!また髪がぐしゃってなったよ〜!」
ニッと笑ってわしゃわしゃと頭を撫でる岩泉は鞄を取り上げて席を確保しに行ってしまう。
何を買えば良いか分からずに唇を尖らせるが、好きなものを頼ませてくれる所などのさりげない優しさに顔が綻んだ。
「ホント…岩ちゃん男前…」
「ふふ、素でああいうことしちゃうんだから凄いよね〜」
「莉子ちゃんも俺より岩ちゃんに懐いてるしね?」
「とーぜん〜!ほら、選ばないと先頼んじゃうよ〜!すみませーん」
「あ"!?莉子ちゃんヒドイ!!!」
悩む及川を置いて岩泉と自分の分をさっさと頼み、渡されたクレープを持って岩泉の座る席へと向かう。
急に後ろから黄色い声が聞こえ、驚いて振り返ると及川が他校の女生徒に囲まれていた。
「莉子、ほっといてここ座れ。で、何にしたんだ?」
「あ、うん!えっとねー、ダブルクリームチョコバナナと、ミックスベリー生クリーム〜!」
「お前の好きそうな組み合わせだな…んじゃ、バナナで」
(やっぱりバナナ選んだ)
「あはは、ハジメ君こそ定番大好きだよね〜?これにしてよかった〜っ」
チョコバナナが食べたかったというのもあるが、岩泉はなんでも定番な事が好きだ。
ラーメンなら醤油を選び、パンならお腹にたまる焼きそばパンなどを選ぶ。
だからクレープならチョコバナナだろうと思い選んだが間違いではなかったことに笑いが込み上げ、クスクスと笑いながらクレープを口にした。
「…お前の好きなの頼めっつったろ?」
「ん?好きだよ〜?チョコバナナ!生クリームだけのもあったんだけど、カスタードも捨てがたかったからダブルにしちゃった〜!」
「お前が食べたかったなら良いけどよ。じゃあ一口でバナナとチョコとダブルクリームのとこちゃんと食えよ?」
「えっ、何それ難しい〜!」
なかなか戻らない及川の存在を忘れて岩泉と2人でクレープを食べる。
幼い頃から一緒だと回し食べなど普通になり、照れもなく「ほら、ここら辺が食いやすいぞ」と差し出された岩泉のクレープをパクリと口に含んだ。
「…!!お前な…!!」
「…?ん!美味しい〜!!じゃあ、こっちもどーぞ〜!」
「……いや、いい…」
(あれ?いちご嫌いだったっけ…?)
クレープを食べた瞬間、顔を真っ赤にして眉を寄せる岩泉にキョトンとするが、甘いクリームとチョコバナナの味にすぐに頭が切り替わる。
自分の持つミックスベリーをあげようかと差し出すとプイッとそっぽを向いて小さく拒否をした。
食べたくないのだろうかと首を傾げて岩泉を見つめると上から影がさす。
「岩ちゃんたら照れちゃって!莉子ちゃん俺に一口ちょーだい?」
「うん、どーぞ〜?」
「照れてねーよ!〜〜っ莉子、一口!」
「わっ、怒んないの〜!はい、ハジメ君…美味し〜?」
(食べるんだ?)
「…ん、美味い」
いつの間にか購入し終わった及川がすぐ後ろにいて少し驚くがそのままクレープを差し出し一口食べさせる。
岩泉は及川の発言にまた少し顔を赤くして怒り、結局クレープを食べてニコニコと笑顔を向けると大人しくなった。