青の騎士と護られ姫
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体育館の入り口まで来ると、国見の予想通りに相手校に囲まれて明らかに困っている莉子を見つける。
手にしたビブスの入ったカゴをギュッと握りしめながら怯える姿に勝手に体が動いていた。
「彼氏とかいるんですか?俺立候補
「ウチのマネに何か用スか」
「この子と仲良くなりたいとかまず俺らに勝ってから言いなよ」
「…その言い方、お二人はこの子と近しいんですか?」
「幼馴染みだ。妹みたいなモンなんで変な野郎には渡せないんだよ。…莉子、こっち来い」
(特にお前みたいな軽くて遊び人みたいな奴にはな)
「あ…うん…」
笑顔ながらも怒りを纏う及川の言葉に相手が反応し、その嫌味ったらしい相手の笑顔に思い切り睨み返す。
莉子を傍まで呼ぶと、クン、とジャージの裾を引っ張って眉を下げて見上げてきた莉子と目が合い、ぽんぽんと頭を撫でた。
(ここでケンカしても仕方ねーか)
「おい、及川。時間ねーから行くぞ!…どうぞ、体育館はこっちです」
「岩ちゃんずるーい!俺も撫で
「莉子、ソレ貸せ」
「これくらい持てるよ〜?」
「無視!?ねぇ、岩ちゃん!?莉子ちゃん来てから扱い酷くなってない!?」
ケンカならバレーでケンカすれば良い上に、決着もついて白黒はっきりできるだろうと小さく息を吐いて切り替える。
慌てて追いかけてくる2人と、背後から睨みつけてくる相手校を連れて体育館へと足を踏み入れた。
*****
「莉子ちゃん見た?俺のサーブ!見た!?」
(あいつ、毎日莉子にあれ言ってんな…)
練習試合を勝利で飾り、すぐに莉子へ駆け寄る及川を見て、嫉妬する女子のギャラリーを見上げて溜息をつく。
構いたいと言う及川の気持ちも分かるがもう少し莉子の立場を分かってやれと何度言えば分かるのだろうと頭を抱えた。
「莉子ちゃん?可愛いッスねー」
「…あ?」
「あんたら2人って有名なんですよ、その2人が…特に及川サンが可愛がってる可愛い幼馴染みがいるって他校でも有名なんスよ?知ってました?」
(莉子が有名?)
面倒そうに声をかけてきた相手校の男から莉子の話が出た為、反射的に足を止めて男を見る。
男は笑いもせずに至って普通に話しているがその内容は面白いものではなかった。
「他校の男子も写真欲しがったり、あとは女子がすっげー嫉妬してんだってさ。…気をつけてあげないと、なんかされるかも?」
「…忠告どーも。でも、俺も及川もアイツを危険な目に遭わせたりしねーよ」
(今までだって、出来る限り守ってきたんだから)
「及川サンだけなら何とかなったけど…岩泉サンがいると莉子ちゃん狙うのはムリかー。残念」
「はぁ?俺じゃなくて、及川がいる時点でムリだろ」
「……わかってないね、アンタ」
一通り話し終わると相手はキョトンと顔を見てきた後、呆れたように笑って自分のチームのベンチへと戻って行く。
最後の言葉の意味がわからなかったが、気になったのは他校にも莉子の存在が有名になっていた事だった。
ベンチに戻る前にこっちに気づいてタオルとドリンクを用意してくれた莉子を見て、“守らなくては”という意識が働く。
「…莉子、今日から一緒に登下校すんぞ」
「えっ」
「えー!ズルい岩ちゃん!俺も俺も!!」
「お前はどうせいつもいんだろが!」
驚きながらも頷く莉子を確認してからドリンクを口に運ぶ。
及川が乱入しては騒ぎ出し、その対応をしている間に莉子は花巻や松川に囲まれて何か話をしている様だった。
「まっきーもまっつんも実は莉子ちゃんのこと気に入ってるよねー?」
「まぁ、悪い奴じゃないから、それが分かれば気にいるんじゃねーの」
(撫でられてんのは納得いかねーけど)
「撫でられてるのは納得いかないよね〜、俺達の莉子ちゃんなのに!」
言い合いの途中で花巻と松川に撫でられている莉子を見て、心の中では渋い顔をしたが、口では普段通りに振る舞う。
隣で及川が心を読んだように同じ言葉を言い、内心冷やりとしたが、及川はムスッとした表情で3人を眺めていた。
ここ最近、莉子の事になると前より必死になる自分がいる気がしてならない。
それ程までに及川に感化されて莉子を可愛がっているのかと感じ、及川と3人の元へ向かった。