青の騎士と護られ姫
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“及川と岩泉の幼馴染みが岩泉と付き合っている”
という噂は1限目を終えた時点で校内で広がり、嫉妬や羨望とはまた少し違った視線を注がれていつもと違う居心地の悪さを体験していた。
「ハジメ君にも“聞かれたら軽く答えるだけでいい”って言われちゃって〜…よくわかんなくて〜…」
「「「なるほど」」」
やっとの思いでお昼休みまで耐え、真奈、麻里、宏香とお昼ご飯を食べつつ事の状態を話すと見事に声を揃えて頷いた。
真奈に関してはもう察しがついたのか「いいんじゃない」とだけ言って笑い、その反応に眉を寄せてムッとする。
「つまりはね、岩泉さんは莉子を及川さんファンからの嫌がらせ回避になると思ったんだよ」
「あー!そっか。及川じゃなくて、岩泉君と付き合ってるって分かれば、嫌がらせをする意味もないしね!」
「そんなものなのかな〜…?」
「ま、ファンからすれば彼氏がいるのといないのとじゃ全然違うしね!で、及川が必要以上に騒ぐと及川が莉子ちゃんのことを好きって認識になってファンからの嫌がらせが始まるから“黙ってろ”って言ったんだよ」
軽く説明した真奈に、麻里と宏香が付け足して説明をしてくれた為か、なんとなく2人が考えていたことは理解した。
そして岩泉がそこまで心配してくれていたことに素直に嬉しくなる。
「けど、岩泉君のファンはどーだろーねー…」
「それもだけど、莉子ちゃんのファンも暴走しないか心配だわ」
「…?ハジメ君のファンはわかりますけど〜…私にファンなんていませんよ〜?」
(聞いたこともないし…)
3人を見ながら首を傾げると、目を見開いて固まる麻里と宏香の横で大きく真奈が溜息をつく。
「知らなくても当然だけど」と言った真奈に自分だけでなく、麻里も宏香も食いつき、真奈が驚いて身を引いた。
「及川さんが昔から莉子のファンには威圧をかけまくってましたから…」
「…やりそう。すごくやりそうだ」
「うん、完璧な笑顔でやりそうだ」
「それに、昔から岩泉さんも莉子も、自分の事になるとホントに疎いから知らなくても当然」
「う、疎くないよ〜!ふ、普通だもん!」
初めて聞いた話に驚きつつも、普通の顔をして話す真奈に必死に返すが簡単に流されてしまう。
麻里と宏香はニヤニヤと笑い「愛されてるね」と今までの事をなぜか真奈に根掘り葉掘りと聞き出してはからかってくる為、いつも以上に疲れを感じた。
(…ハジメ君のファンって、ある意味徹君のファンより怖いんだよね〜…)
「莉子、何かあったらホントにすぐ連絡してよ?」
「え?」
昼休みが終わり、麻里と宏香と別れてから昔の事を思い出して考えていると、真奈が改めて真剣味を帯びた声で話しかけてくる。
急に話しかけてきた真奈の顔を見て、中学の頃より心配してくることを疑問に思っていると、真奈は眉を寄せて声を潜めた。
「岩泉さんのファンって、及川さんをアイドルとして見てる人達と違って本気で惚れてる人が多いでしょ?」
「…うん、私もそれ、今考えてたんだぁ…」
(けど、イジメが怖いからって2人と距離を置くのも嫌だし…)
「なんかあったら迷惑とか考えずにあたしや先輩に絶対言うんだよ?あんたはいつも肝心な事言わないんだから!」
パチン!とでこぴんをされ、反射的に「いたっ!」と額に手を当てて真奈を見ると、真奈はニッコリと笑う。
小学生の頃から仲の良い友達が真奈で良かったなと感じ、ニッコリと笑い返した。