青の騎士と護られ姫

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部員の前で挨拶を済ませ、コーチの溝口や今までドリンクを作っていた部員がマネージャー業であるスコアのつけ方やドリンクの作り方を教えてくれる。


粉を入れて、水を入れる…簡単な作業だが、分量を間違えると不味くなるから不思議だ。



「…マズイ…」


「倉澤さん、な、慣れだから!大丈夫、これからだ!」


(先輩が作ったドリンクは美味しいのに…)
「1ヶ月後までには作れる様にならないと〜…」



先輩である部員に教えてもらい、一緒に粉を入れて一緒に水を入れたドリンクはどこで差がついたのか不味くて飲めない。


今日で何度作ったか分からないほど作ったが、最後の最後まで何故かうまく作れなかった。


眉を寄せてドリンクボトルと睨めっこをしているとパッと目の前からボトルが消え去り、ぐるりとボトルを追って振り向く。



「…薄いな」

「大丈夫、莉子ちゃん!飲めるよ!大丈夫!!」


「ハジメ君〜!?徹君まで〜!!」



上から声が降ってきたかと思えば、視界に飛び込んだのは一口ずつドリンクを口にした2人の姿だった。


ドリンクも作れない程度ではダメだと落ち込むと頭と肩に温もりを感じる。



「ま、そのうち慣れるだろ」

「俺は莉子ちゃんの作ったドリンクならどんな味でも飲むよ!!!」


「徹君のはフォローなの〜?嫌味なの〜?」
(嫌味にしか聞こえなかったけど)


「フォローだよっ!?なんで笑顔で怒ってんの!?」



岩泉の短い言葉に励まされて頷くが、及川の言葉には何故か励まされない上に気に障り、ニコニコとしながら言うと焦った様に返してくる。


そんな及川を他所に、今日無駄使いしてしまった分を自腹で買い直そうと考え、周りで喚く及川を無視しながら時間の計算をしていた。



*****



部活を終えていつも通り居残り練習をするであろう及川や岩泉に“先に帰る”と言い、慌てて着替えて門まで走る。



(この時間ならまだ間に合う…!)


「莉子!」


「!?…ハジメ君〜?」



門を出てすぐに名前を呼ばれ、振り向いて岩泉だと認識すると同時に腕を引っ張られる。


岩泉にそのまま乗ろうとしていたバスに引っ張られ、空いている席の窓側に座らされた上にどかっとその隣に岩泉が腰かけた。



「お前、スポーツショップ行くんだろ?付き合ってやる」

「えっ!?な…なんで分かったの…!?」


「お前の考えそうなことだからな。自腹で今日の分買い直すんだろ?」


「お見通しだなぁ…さすが、ハジメ君〜…」



急に腕を引っ張られて驚いたが、その少し不器用な優しさは昔から変わらず、幼馴染み特有の察し方も相変わらずだ。


苦笑しながら岩泉を見ると、岩泉も同じ様な笑顔を作る。

きっと同じ様な事を考えているのだろう。



「そういやお前、今んとこ平気なんだな?」

「ん〜?あ、嫌がらせ〜?…今の所はないかなぁ」

「呑気に言いやがって…」


「多すぎてちょっと慣れちゃったしね〜」



流れる景色を見ていると、話しかけられ答えるが、窓越しに合った岩泉の目は鋭く、少し怯んでしまった。


慌てて振り返って直接見ると、窓越しとは比べ物にならない威圧を出して岩泉は睨んでくる。



「んなの、慣れんじゃねーよ、アホが!」


「ひゃっ!?ご…ごめんなさい…!?」
(お、怒られた…!)


「お前は何も悪くねーんだから、嫌がらせになんか慣れんな、負けたのと一緒じゃねーか、そんなの…」


「…!…うん、ごめん〜、ありがとう、ハジメ君」



いきなり怒鳴られたかと思うと次はムスッと唇を突き出して視線を逸らしてしまう。


子供の頃から照れる時にする岩泉のその変わらない癖を見て岩泉が可愛く感じ、心配してくれていることが伝わって嬉しくなり、つい笑ってしまった。



「笑ってんじゃねーよ…」

「ごめんごめん〜、なんか嬉しくて〜!」
(いつも心配してくれるよね…)


「はぁ?何だよ急に」

「秘密ーっ!」
(ハジメ君、まだ自分の癖に気付いてないんだ〜っ)



ニコニコと笑う顔を眉を寄せながら見る岩泉は、ムスッとした顔のままボタンを押した。
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