青の騎士と護られ姫
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教室のドアから中を覗くと、2年しか違わないが自分とは比べ物にならない大人っぽい人が多くてポカンとしていると、麻里が気付く。
宏香を引っ張り、ドアまで来ると及川を一瞥してから岩泉に笑いかけ、なぜか頭を撫でられた。
「こんなとこまで会いに来てくれるなんてー。もー!可愛いんだから!」
「どーしたのー?何か用事?」
「あ…えと、昨日、何も言わずに飛び出したまま連絡できなくて〜…ごめんなさい」
ペコ、と頭を下げてから岩泉の背中に隠れて様子を見るとキョトンとした後、2人ともが吹き出して笑いだした。
その姿をみていると「岩泉君から聞いてるから大丈夫だよ」とまた頭を撫でられ、岩泉を見上げると「良かったな」と頭をわしゃわしゃと撫でられた。
*****
「心強い味方が出来て良かったよね」
「うん!今の所嫌がらせもないし…!」
「莉子、なんかあったら言いなよ?」
放課後になり、昇降口まで 真奈と歩いていると、昼休みに会った麻里と宏香の話をして笑ってくれる。
小学校でも中学校でも、及川絡みで嫌がらせやイジメを受ける自分の味方になってくれる真奈は1番の親友であり、信用できる人だ。
その真奈が味方だと言うのだからそうなのだろうと嬉しくなった。
「じゃあ、部活頑張って!立派なマネージャーになりなさい?」
「は〜いっ!頑張りま〜すっ!」
おどけて言う真奈のノリに合わせて返し、手を振って別れてから着替えの為に女子バレー部の部室へと向かってノックをする。
ガチャリと開けると女子バレー部の面々が一斉にこちらを向いた。
「あ、及川の幼馴染ちゃん?ここ空いてるから使って!」
「…にしてもあの及川に頼まれた時はウザって思ったけど、岩泉君に頼まれると断れないよね」
「…えと、皆さんは徹君のファンじゃないんです、か?」
「ウチら3年は岩泉君の方が好きだよー!」
「1〜2年の中にはまだ及川に幻想抱いてる子もいるけど、嫌がらせとかはないから安心して!」
「ありがとうございます…!」
ニコニコと笑う部員にペコペコと頭を下げ、空いているロッカーを使わせてもらうことにしてさっさと着替えを済まそうと制服を脱ぐ。
今日の授業の話や彼氏の話で盛り上がる女子バレー部を少し羨ましく感じながら無言で着替えているとジッと視線を感じた。
「あの…な、なんでしょう〜…?」
「ぶっちゃけ、どっちが好きなの?」
「え!?ななな、何がですか〜!?」
「及川と岩泉君!どっちが好き?」
この質問は昔からよくされる質問でもあり、毎回答え方は決まっている。
恋愛感情を持ってない相手の好き嫌いを決める理由としては、十分過ぎるくらいあの2人は性格が違うのだ。
「バレー以外なら、断然ハジメ君が良いです〜。徹君のテンションは高すぎるので〜…」
「あー…やっぱ及川の性格知ってる子は岩泉君に走るよねー。及川おつ!」
ケラケラと笑うバレー部員を見ながら苦笑して時計を確認すると、集合時間がギリギリに迫っている。
「失礼します〜!」と慌てて頭を下げて体育館へ急ぐと、体育館には監督である入畑とコーチである溝口が及川と岩泉と話している所だった。
「あ!莉子ちゃん!来た来た!」
「ごめんなさい、遅刻…?」
「いや、大丈夫だ。…倉澤さん、今日から宜しく頼むよ」
「お前にはレギュラーのマネージャーしてもらうことになったから」
ニコニコと上機嫌な及川を見上げていると、入畑が人の良さそうな笑顔で話しかけてくる。
ペコ、と頭を下げていると、岩泉が横から話し出し、部員全員ではなく、レギュラー専用という事になったという内容だった。