青の騎士と護られ姫

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(…こんな風にちゃんと試合見るの、いつ振りだろう)


「莉子!!」


「!?」

「見とけよ!」



挨拶が終わり、ぼーっとその様子を眺めていると、試合が始まる直前に名前を呼ばれて驚き、呼ばれた方へ顔を向けると岩泉がニッと笑っている。


突然の事で驚いた事と、注目を浴びている恥ずかしさからコクコクと縦に思い切り首を振って応えるのが精一杯だった。



「なにあれ!カッコいいー!!」

「莉子ちゃん愛されてるね!!」


「そッ、そんなんじゃないです…!!」
(ハジメ君ってばたまに徹君みたいなことするんだから…!!)



自分の顔が赤くなるのを感じながら誤魔化す様に始まった試合に意識を集中させた。



*****



試合が始まってからギャラリーを始め、体育館の中が何とも言えない空気になっていた。


なぜベスト4の青城がこんな所と試合をしているのかと疑問に思う程、烏野のチームワークは滅茶苦茶で、ミスが多すぎる。



「あのチビ、完全に1年だよね」

「雰囲気に呑まれてんじゃん?可哀想〜」


「なんか、もう逆に応援したくなりますね…」
(飛雄がすごく怒ってる…!!)



岩泉だけでなく、青城の他の選手の攻撃も次々に決まり、1セット目はすでに青城24-13烏野で青城のマッチポイントだ。


そしてこの大事な局面での烏野のサーブが、始まってからずっと調子の悪いオレンジ頭の5番の男で、ギャラリーはもう憐れみモードに入っていた。


(頑張れ…!!)


心の中で応援するとピーッと笛が鳴り、5番がサーブを打った瞬間、体育館の空気が一瞬にして凍りつく。


ボールはゴッと鈍い音を立てて影山の後頭部に当たり、跳ねてネットに当たって落ち、1セット目を取られた上にボールをぶつけられた影山は怒りを露わにした。



「ぷっ…ぶフッ!!待って!!ツボ…!!」

「ちょ!笑わない!!」


(と…飛雄…!?飛雄、暴れちゃダメだよ…!)



両隣の先輩が必死に笑いを堪える中、1人ヒヤヒヤと影山の様子を見守る。


“ヤバい”という顔をする烏野のチームメイトともう今にも死にそうな5番の男を見て、岩泉に助けを求めようかと考えた矢先。


「ぶォハーッ!!ぅオイ後頭部大丈夫か!!!」

「ナイス後頭部!!」


2番の坊主頭の男と6番の眼鏡の男が笑い出し、ただでさえ怒っている影山を煽る。


5番の男はゆらりと動き出した影山に壁まで詰めてから何か会話をして怒鳴られ、その後に2番の坊主頭の人に叱られ、励まされて元気になっていた。



「…なんかあの子可愛くない?」

「確かに!本当に高校生かな?」


(…なんか、青春って感じがする)



ワイワイと話す烏野を見ても、淡々とミーティングをしている青城を見ても“今この瞬間、この場にいる”という事が青春だなと感じながら眺めていた。
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