青の騎士と護られ姫
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-莉子side-
練習試合の日、なんとなく会いたくない気持ちからコソコソと過ごしていた1日がやっと終わり、練習試合に行く勇気がなく帰る支度をする。
(ハジメ君の活躍、見たいのは見たいんだけどなー…)
「莉子ちゃーん!迎えに来たよー!」
「練習試合見に行こー!」
「えっ…!せ、先輩…!?」
教科書を鞄に詰めて溜息をつくと、扉の方から聞いたことのある声が自分を呼んだ。
ビクッと驚いて視線を向けると、まさかの昨日の3年生2人組が扉の所で笑顔で手を振っている。
ギョッとなった上に、約束も何もしていないはずの2人がなぜ迎えに来たのかがわからず、軽いパニックを起こしていた。
「岩泉君から頼まれたんだよねー!“多分来ないから連れて来てくれ”って」
「きっと活躍するとこ莉子ちゃんに見て欲しいんだよ、岩泉君」
「えっ…と、多分、違うと思い
「ささ!早く行かないと女子が沢山来るから〜!」
「え!?あの、ちょっと…!!」
岩泉は及川に頼まれたからそう言っているんだと説明しようとするが遮られ、グイグイと腕を引っ張られ、荷物も取り上げられてしまった。
完全に帰れなくなったこの状況に少し複雑になりながらも体育館に行き、他の及川ファンに紛れる様にギャラリーに加わる。
「んぁ?知らない子がいる。1年?」
「あ、はい、あの2人は1年生ですよ」
(勇、英、すごいなぁ…)
「へぇー!この青城で1年からレギュラーってすごいじゃん!」
練習試合前だからか、今日の練習試合のメンバーは同じコートで練習していた為、国見や金田一みたいに新しい顔が中々に目立っている。
この間の見学でも思ったが、副主将でありながら、及川よりも岩泉の方が働いている様に見え、2人の関係がいつまで経っても変わっていない事に嬉しさと、寂しさを感じた。
「挨拶!!」
「「「お願いしぁーす!!!」」」
「「「お願いしぁーす!!」」」
ガラガラと扉が開き、大きく挨拶をして黒いジャージを来た高校生が10人程入ってくる。
その中に見覚えのある顔を見つけて固まったしまった。
(飛雄!!??なんで!?)
「黒っ!!鳥…野?」
「烏でしょ?烏野!…莉子ちゃん?固まってどしたの?」
「え!?あ、急に大きな声が聞こえたから、びっくりして…」
「なにそれ!可愛すぎでしょ!!」
(飛雄、烏野に行ったんだ…!)
先輩2人に挟まれて話しつつ、中学の同級生、影山飛雄から目が離せなくなる。
友人である影山は、友人である国見や金田一との間に亀裂があり、幼馴染みである及川にとって脅威の対象であった。
単なる練習試合だと思っていた分、何か起こるんじゃないかと自分の中で焦りが生まれる。
(中学の頃は飛雄がよく英に怒鳴り込みに来たり、勇と廊下で掴み合いになったりしてたし…心配)
「…大丈夫かな…」
「なになに?勝てるか心配?大丈夫でしょ!こっちは岩泉君がいるんだし!」
「そう…ですよね」
(お互いに先輩もいるし…大丈夫だよね…?)
勝敗の心配より、暴動の心配をしてハラハラと様子を見る。
烏野高校はワイワイと賑やかに会話をしていて、少し拍子抜けだが、影山の性格的にバレーが絡むとより神経質になる為油断はできない。
お互いにネットを挟み、軽くレシーブなどの練習をしてからビブスを着て選手が1列に並び、試合開始を迎えた。
「烏野高校 対 青葉城西高校、練習試合始めます!!」
「「「「「お願いしぁーす!!!」」」」」