腹黒王子と毒舌王女
□19【1章 完結】
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皆、言葉少なに学校へ帰った。
「お疲れ様ー!」と声をかけてくる女子にも、応えることなく体育館に入っていく。
そしてミーティングを行うときに「春高まで残りたい」と3年生の意志を聞き、1・2年生はそれを受け入れた。
今日は解散、明日は自主練。
いきなり練習をしないのは、きっと入畑や溝口の計らいなんだろう。
ミーティングが終わると、及川はボールを掴んでコートへと行く。
「及川、今日はもうあがりだろ」
「まだ。練習が足りない」
「今日はやめとけ」
及川の行動を見ていた岩泉は溜息をついて及川の元まで行き、腕を掴んだ。
「……………」
「おい、及川!」
「俺は!今まで妥協もせずにやってきた!!それでもアイツに勝てない!!!まだ足りない!!こんなんじゃ足りないんだよ!!」
及川はバッと岩泉の腕を払い、思い切り叫んだ。
こんな及川は皆初めてだったんだろう。
驚いた顔で及川を見る部員を見て、慌てて及川の元へと走った。
「徹君、練習したいのはわかるけど〜、でも今日は
「莉子ちゃんに俺の気持ちなんかわかんないよ!!!!」
「バカ!及川!!!」
その一言が、重かった。
わかりたい。知りたい。共有したい。
それを出来ないことは、自分が1番よくわかっている。
性別も学年も違う、どれだけ好きでも同じコートには立てない。
「あっ…ごめ…」
「…わかんないよ…」
(私には、わからない)
岩泉の言葉でハッと顔を強張らせ、気まずそうに謝る及川に、俯いていた顔を上げ、思い切り及川のジャージを掴み引き寄せた。