腹黒王子と毒舌王女

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及川がドアを開けてすぐ、バタバタと何人もの足音が聞こえた。


「おい!及川!莉子がいたのか!?」


皆残っていたのか、とぼーっとした頭で考える。



助かった。

けれど、汚れてしまった。



「…………とお…る…く…」

「チッ…今からがお楽しみだったのに」



男はニヤリと笑って起き上がる。


腕を拘束してた男も舌打ちをして腕を解放し、立ち上がる。



腕が自由になったことに少し安心し、むくりと起き上がり前を隠した。



「莉子!?」

「おいテメェら!!!莉子に何したッ!!!!」



次々にかけつける岩泉や松川達が見たこともないくらい怒っている。


その顔が怖くて目を見開き固まってしまった。



「及川。1番奥のアイツ…」

「…………………」



花巻に耳打ちされ、俯いていた及川がゆっくりと顔をあげる。


ゾクッ…………!!!


顔を上げた及川の感情のない表情に冷え切った目。


そこにいた全員が息を飲むほどの威圧を放っていた。



「ねぇ、キミタチ。何、してたの?」


「及川君も無粋だよねー。見ればわかるっしょ」

「この子可愛い反応するからさー、今からが超楽しみだったのに」



ニヤニヤと挑発をかける男達に、岩泉や松川や金田一は思い切り敵意を剥き出しにする。


殴りかかりそうな皆を腕で制して及川は近づいてきた。


一歩近づく度に、倉庫の中の気温が少しずつ下がっていく感覚に陥る。



「…ねェ。…俺、結構怒ってるんだよね、今」


「あ?」

「そこにこのナイフ落ちてたけど、これで莉子ちゃんのこと脅したの?」



スラ…っとナイフを取り出し鋭く睨みながら口は弧を描いた。

その表情を見た男が2・3歩後ろに下がる。


及川はナイフを近づけながら男を見下ろし、見たこともない冷笑を浮かべた。



「…ねェ、これ、犯罪だよね…?君はウチの生徒じゃないし、その制服も誰かから借りたかなんかしたんでしょ?」


「…だったらなんだよ、サツに通報すんのか?そんなことしたらこいつまで傷つくんじゃねーの?」

「通報なんてしないからさぁ…」



そこで言葉を切り、俯いて息を深く吸い、怒りを全面に出した顔で男の眉間にナイフを突きつけながら笑った。



「お前らに手引きした女全員教えろ」



このままでは及川が男達を傷つけるかもしれない。

そう思うほど、及川がいつもとはまるで違う人に見えた。
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