腹黒王子と毒舌王女

□8
1ページ/6ページ



男の笑顔に影が差した気がしたその瞬間、後ろから2人の男に腕を掴まれた。


「!?な、なにっ…!?」


「さてとー。移動しますか。ここは見つかりやすいからな」

「本当に1人で来るとか警戒心なさすぎ」


両腕を掴まれ、ポケットの中で発信の準備をしていた携帯から手が離れる。



「…どういう、ことですか…?」


「んー、君に伝言があってさー。“あんま調子乗ってると汚すって言ったよな?”だってさ」


「その言葉ッ…!!!」


あの女生徒が放った言葉だった。


“汚す”


(まさか…!!)



「俺ら、汚しに来たんだよね。君のこと」


「ッ!!」



驚きで体が固まる。

息がしにくい。

頭がうまく回らない。

どうすればいいかわからない。


その瞬間、少し男たちの力が緩んだ気がした。

そして思い切り腕を振り払い走り出す。



「ちッ!待て!!!!」


「お前そっちから回れ!3人いんだからすぐ捕まえられる!」



後ろから声がして追いかけてくる足音と怒声。


とにかく逃げなければ、と足を進める。


(私の足じゃすぐ追いつかれるッ…!!)


どのクラスかも分からず教室に逃げ込み、急いで携帯の発信を押した。


発信は岩泉。


残ったメンバーの中で1番上に名前があったからだ。


コールが鳴り、縋る気持ちで携帯を握り締める。



『もしもし、莉子?』


「はっ…ハジメく…
『莉子ちゃん!?どうしたの!?』

「と、おる…く…」



恐怖で震え、上手く言葉が出てこない。

早く助けてと伝えたいのに声が震える。



そして背後のドアが開いた。


「見ぃーつけたっ!莉子ちゃーん。鬼ごっこは終わりだな」

「や…!」

「うぉい!いたぞー!こっちだ!」



男2人が距離を詰めて来る。
足も腕も震えてしまって動けない。


手の中の携帯から及川の必死な声が聞こえるがもう恐怖で答えられない。


一気に距離を詰められ、弾かれた様に走り出すと携帯を落としてしまった。


(やばい…!)


そう思った時には遅く、男たちに腕を掴まれてしまった。



「ヤダッ!!!!離してッ!!!!」
(怖いっ…!)


「へぇー。さっきは暗くてわかんなかったけど可愛いじゃん!」

「離してッ!ヤダ!ヤダぁッ!!!!」


「テメっ!暴れんな!!!」



男に掴まれた腕を引くがビクともしない。

楽しそうに笑う男達を見て寒気がした。



『莉子ちゃん!莉子ちゃんっ!?今どこ!?莉子ちゃん返事して!!!』



及川の声が聞こえる。
携帯はまだ繋がっている様だ。


(大声を出せば…!)


息を吸うと大きな手で口を塞がれ、声が出せなくなってしまった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ