腹黒王子と毒舌王女
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及川徹と出会ったのは幼稚園の頃だった。
親同士が仲が良く、頻繁に遊んでいたし、優しくて大好きなお兄ちゃん代わりだった。
2つ年上の及川はよく面倒を見てくれていたし、昔は名前を呼んで追いかける程好きだった。
小学生になると、及川はバレーボールのクラブチームに所属し、岩泉という友人もできていた。
毎日バレーボールの練習をしていたし、ボールを投げたりと手伝いをしていたが、及川はその頃から腹黒い性格の片鱗を見せ始めていた。
バレーを始めてから余計に女の子にモテる様になり、ヘラヘラと笑う様になった。
そんな及川が嫌だと思う反面、年下の自分と距離が出来てしまうみたいで寂しかった。
バレーにのめり込んだ及川と会う回数も減り、見かければ女の子に囲まれてヘラヘラして、及川を見るだけで不愉快になった。
そして中学に先に上がった及川の噂は毎日の様に小学校まで流れていた。
そして小学6年生の春。
「莉子ちゃん!中学、北川第一においでよ!」
自分の活躍を見て欲しいとしつこく言うので結局北川第一へ進学した。
そして及川に構われていることに嫉妬した人達にイジメられた。
それを助けてくれたのはいつも岩泉や国見や金田一だった。
皆に何度も及川に伝えようと言われたが、部活の邪魔になるから、と秘密にしてきた。
そうやって、自分から及川との距離を取る様になった。
及川のこと自体は嫌いではない。
嫌味を言ったりする所は好きにはなれないが。
及川のことなどしっかり考えずに今まで接してきた。
けれど、本当はどう思っているのだろうか。
及川のことを、恋愛対象として好きなのか。
それとも、幼馴染みで嫌いになり切れないだけなのか。
いくら悩んでも答えは出ない。
微妙な距離が空いた上にその時間が長すぎた。
(好きなんて言わないでほしかった…)
はぁ…と溜息をついてベッドに突っ伏する。
嫌い、面倒だと思っていた及川の見方が変わってしまう。
自分の中の感情がごっちゃになるのを感じ、むしゃくしゃして考えるのをやめた。