腹黒王子と毒舌王女
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放課後、入畑に練習試合の段取りを聞いていた。
今日はすることが多い。
影山をスタメンに選ぶということを条件に練習試合を組んだのに、当の及川は捻挫で試合に出ない。
(なんて自分勝手なことをしたんだろう、あの人…)
「はぁ〜…ったく、こっちは正セッターじゃないなんて、頭上がらんな…」
「倉澤、失礼の無い様に頼むぞ」
「あ、はい!頑張ります…」
何故かとばっちりを受けプレッシャーがかかる。
初めて此処へ来るであろう烏野のバレー部の案内役に抜擢され、内心ドキドキしていた。
「ああ、もうこんな時間か、倉澤、迎え頼んだぞ」
「はい、外で待ってます〜」
入畑と溝口と別れ、門の方へと急ぐ。
体育館を出るとすでにバスが停まっていた。
“やばい…!”と思いキョロキョロと周りを見回すと、真っ黒な集団がこちらに向かって歩いて来るのが見える。
その中に1人、見覚えのある顔がいた。
「飛雄〜っ!久しぶり〜っ!」
名前を呼ぶと驚いた顔で全員がこちらを見る。
顧問であろう眼鏡をかけた人が前に出て人の良さそうな笑顔を向けてきた。
「えっと…マネージャーさんで良いのでしょうか?」
「あ、はい!今日、初めに案内をさせて頂きます、マネージャーの倉澤莉子です〜。よろしくお願いします」
お辞儀をして頭をあげてからニコッと微笑む。
すると全員揃って頭を下げ「お願いします!」と挨拶をされてしまった。