腹黒王子と毒舌王女
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次の日から朝練も付き合うことになり、朝早く眠い目を擦りながら家のドアを開ける。
「莉子ちゃん、おはよう」
バタン。
(あれ…?)
反射的にドアを閉めてしまった。
何か見てはいけないものを見た気がする。
急に騒ぎ出した心臓を落ち着かせるために深呼吸をして、もう1度ドアを開けてみた。
「おはよう、莉子ちゃーん」
バタンッ…
(なんでいるの…?)
「莉子ちゃーん?朝練遅刻するよー?」
ドアの向こうからのんびりとした声が聞こえてくる。
はぁ、と溜息をついて諦め、ドアをあけるとどアップの及川徹がいる。
「一緒に行こう、莉子ちゃん」
ニッコリ笑うその笑顔に嫌悪感を抱いた。
また何か企んでいるのだろうか。
「…なんで家まで来る必要があるの〜…」
「だってなんかこういうの良くない?」
「良いと思ってるの、及川さんだけだから〜」
ニッコリと笑ってドアを閉めて歩き出す。
180cmもある男子が150cm程度の女子の歩幅に追いつくなんて簡単なのだろう、及川は隣に来て莉子に歩調を合わせて歩いてきた。
「ねぇ、莉子ちゃん。俺さ、今年はいけそうな気がするんだよねー」
「どこに〜?」
「インターハイ」
何を言い出すのかと思い隣を歩く及川を見上げると、珍しく裏のない笑顔を浮かべている。
思わずドキッとして、慌てて言葉を紡いだ。
「…!そう、なんだ〜」
「うん、だからちゃーんと見ててよね?俺頑張っちゃうからさっ!」
「…うん、わかった。…いつでもそういう笑顔ならいいのにね〜、徹君」
(そうすれば、少しは仲良く出来るのに)
小学生の頃から今まで見てきた及川の必死に練習する姿を思い浮かべて、自然と表情が緩む。
及川を見上げてそう答えると、及川は目を見開いて困った様に笑った。