腹黒王子と毒舌王女
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あれから2日後、毎日の様に及川はクラスまで来て、メールを送って来て、その度に同級生に囲まれて質問攻めに合っていた。
「はぁぁ…疲れたぁ…」
「毎日大変だな、お前」
「ねぇ、英。そう思うなら助けてよ〜」
「女子が怖いから無理」
席に着くと必ずと言っていいほど国見が振り返って労ってくれる。
見た目はやる気がなさそうな感じだが、意外にも優しい。
「ほい、キャラメル」
「ありがと〜。…好きだよね、キャラメル」
「塩キャラメルが好きなんだよ」
(変なこだわりだなぁ)
「一緒じゃん〜!」
キャラメルと言うと必ず“塩キャラメル”と訂正してくる。
毎回それが可笑しくてつい笑ってしまう。
友達と話すことは楽しいが、及川絡みの話だと必要以上に疲れるのだ。
昼休みももうすぐ終わる。
午後を乗り切れば、後は真奈と帰るだけだった。
「莉子ちゃーんっ!」
「!!??」
少し慌てた様な及川が迷わずこっちまで駆けてくる。
ギョッとして身構えると、ニコニコと笑いながら話しかけてきた。
「莉子ちゃん、今日の放課後暇!?」
「え、なに…
「暇だよね?暇暇!じゃあ迎えに来るからね!帰らないでイイコにして待ってて?国見ちゃん、莉子ちゃん帰らないように見張っててね!」
「ハイ」
「ちょっ…及川さ…
「そんじゃねっ!」
「コラ待てクソ及川ぁぁあ!!!」
口を挟む間も与えられないまま要件だけを言い渡されたかと思うと、風の様に去って行く。
及川が廊下に出て数秒後、怒っているであろう岩泉の声が響いていた。
「あ、英っ、なんで返事するのーっ!?」
「先輩命令」
「そんなぁー…」
あまりの突然の出来事にクラスが静まり返り、机に項垂れる。
(こうなったらチャイムと同時に逃げるしかない…!)
隣のクラスの真奈に経緯をメールし、逃走の手筈を整えるために午後の授業が始まる前に鞄や机を整理しておいた。