腹黒王子と毒舌王女
□1章 1
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入学式をぼーっと出席していた。
なぜ自分は此処にいるのか、
なぜ此処に入学してしまったのか、
遡ること1年前…。
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自分が中学3年生の頃。
進路をどうするか、という時期に幼馴染が頻繁にやって来るようになった。
「莉子ちゃーん!」
女子の憧れ、及川徹。
世間的には、
甘いマスクで人気者、実力共に併せ持つバレーボール部の王子様。
しかし本当の顔は
嫌味で女たらしでナルシスト。
とんでもなく腹黒い男。
「……………」
「ぇえ!?莉子ちゃんっ!シカトしないで!!」
聞こえなかった振りをして横を通り過ぎると及川は慌てて後ろを追いかけてきて隣から顔を覗き込む。
莉子はあからさまに溜息をついて及川を見上げた。
155cmから184cmを見上げるのは首が痛い。
「なぁに?及川さん」
「もー!幼馴染みなんだから!そんな余所余所しい呼び方やめなよ」
ニッコリ笑顔でさらに“及川さん”と呼んで壁を作るが、及川はいとも簡単にその壁を越えて乗り込んでくる。
「ねぇ、莉子ちゃん、青城来るよね?」
「なんで?行かないよ〜」
「え!?なんで来ないの!?来てよ!!」
「及川さんが居るから嫌で〜す」
ニッコリと本人を目の前にして毒を吐く。
このやりとりが何回も続き、及川のしつこさに負けて結局青城を受け、受かって今ここに至る。