青の騎士と護られ姫

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-莉子side-



「明日から予選だ。今日はあまり無理するなよ」


「おい、及川。怪我したらブットバスからな」

「岩ちゃん怪我した相手ぶっ飛ばすの!?」

「うるせえ。怪我したらぶっ飛ばしたって変わんねーだろ」

「いや待ってホント待ってそれホントに酷いやつ!」



金曜日、つまりは予選前日になり、監督の一言により練習が始まるが、いつもオーバーワークになりがちな及川に岩泉が注意をする。


いつも通りの、何も変わらない言い合いが嬉しくてニコニコとしながらその様子を眺めていた。



「随分嬉しそうじゃん、莉子姫」

「1週間離れただけだろ?」


「1週間が私にとっては長かったんですよ〜」



花巻と松川が話しかけてきて苦笑しながら返すと花巻に髪をイジられ、松川までもが髪を触る為2人の顔を交互に見る。


初めの頃は背が高い上に話した事のない上級生で怖いと思っていたが、今ではとても頼りになる上級生というイメージになった。



「つーか髪切られたって聞いたときはビビったけど普通に大丈夫じゃん」

「うん、似合うな、可愛い可愛い」


「本当ですか?やった〜」
(褒められるとやっぱり嬉しいなぁ)



ニコニコとする花巻と松川を見て感じたことは新しくお兄ちゃんが出来た感覚だった。


及川と岩泉とはまた違う感じの2人と話していると言い合いもなく、とても平和だと感じてとても和やかな会話になる。



「うぉい!こら花巻、松川!なにベタベタしてんだよッ!!」

「莉子ちゃん逃げて!2人は狼なんだよ!!」

「テメーが1番狼だろーが!!」

「え!?岩ちゃんここは莉子ちゃんを守る為に仲良くするところでしょ!?」


「誰がテメーと仲良くすんだよ!!!」


「「…人気者だな」」


「……あ、はは……どうも…」



急にこちらに矛先が向いたかと思うとズカズカと歩いてくる岩泉の後ろから及川が慌てて追いかけてくる。


2人は自分達に向いた矛先に笑顔を引きつらせたが及川の一言でまた矛先が及川へと返り、2人と共に呆れ笑いを漏らした。



「なに遊んでんだ!練習しろボゲェ!!国見!!突っ立ってんじゃねーぞ!!!」


「ゲッ、溝口君ご立腹じゃん!」

「練習すっぞ!!コート入れ!!」


「ケガしないでね〜!」



一連の流れを見ていたであろう溝口の痺れが切れたらしく怒りの表情を思い切り出しながら指示を飛ばし出す。


驚いた部員が慌ててコートに入っていく所を笑いながら見送り、明日からの予選の用意をする為に足りないものはないかと救急箱を開けた。



「あれ、全然ない…」


「倉澤?…ああ、救急箱の補充忘れてたな」


「あ、じゃあ今日買っておきますね〜」


「悪い、お前に任せきりだったからすっかり抜けてた、頼むわ。…おい国見ボゲェ!サボんな!!」



蓋を開けて固まっていると溝口が横から覗き込んで思い切り“マズイ”という顔をした。


苦笑しながら対応すると溝口も苦笑しながら答えたその言葉に少しだけ自分がこの1ヶ月に少しでも役に立っていたのかと思うと嬉しくなる。


すぐにサボりながら練習する国見を目ざとく見つけて注意しながら戻る溝口を見て忘れないように手の甲にボールペンで買うものをリストアップした。
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