青の騎士と護られ姫

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一瞬何が起こったかも分からず、固まったまま動かずにいると、腰に回された細い腕にぎゅう…と力が込められ、抱きつかれていることに気づく。


(おいおいおいおい!!!!)


「ずっと守ってきてくれて、ありがとう〜」


小さな声で、けれどはっきりとした口調で発信された言葉が、ギュッと心臓を収縮させた。


自分の気持ちが見えないせいで、莉子を避けて、傷つけて、きっと自分の知らないところで泣いたりさせてしまったのだろう。


それでも笑顔を見せてくれる莉子に、嬉しさと、それ以上の申し訳なさを感じた。



「…ッ、避けるような事して悪かった。…俺のせいなら俺とはあんま関わんねー方が良いんじゃねーかって勝手に思っちまった」


「…大丈夫、今こうして普通に話せてるから、もう全然辛くないよ〜!」


(相変わらず優しいっつーか、甘いっつーか…もっと怒ったって構わねーのに…)
「…莉子、もう絶対隠し事はすんなよ」



ぎゅうっと更に力を込めてから腕を離した莉子を振り返ればニコニコと笑い、ちゃんと笑えてるかは分からないけれど笑顔を返す。


誤魔化すように莉子の頭に手を置きながらこの先の事を考え、1番心配している事を言えば、莉子は素直に頷いた。



(隠したとしても、今度はちゃんと気づいてやるけどな)
「おう、約束だかんな。……やっぱ、髪…短くなったな…」


「…っ!!!ぅ、うん〜…」





莉子の顔を見る様に腰を曲げていた自分の視界に、短くなった莉子の髪が入ってくる。


気がつけば髪を一房掬い上げ、ジッと髪を見つめて昔の莉子の長さを思い出していた。


腰まで伸ばして、しっかりと手入れしていた髪を無情にも切られ、辛かっただろう。



(毛先の癖毛はやっぱり出るんだな…クルってなってら…)


「麻里先輩が綺麗にしてくれたから美容院に行く手間も省けたし〜、元々切ろうと思ってたから〜!」


「…気遣うなっての」



莉子の毛先はいつもクルクルとなっており、そこが可愛いと及川が話していたことを思い出す。


確かにな、と毛先を見て感じ、明るく声をかけてくる莉子に苦笑して目が合った瞬間、真っ赤な莉子の顔を見て自分の今している事に気付いた。



「あ"ッ!!悪ぃ、またやっちま…
「また伸びるよ〜、大丈夫」


「………………おう、サンキュ」
(天然でこんな事するって、さすが及川の幼馴染みって感じだな…)



莉子の赤くなった顔を見て、恥ずかしくなり慌てて手を離そうとした瞬間、莉子が手を重ねてきた。


いつものニコニコとした笑顔ではなく、ふわりと笑う優しい笑顔。


重ねられた手は熱くなり、心臓は馬鹿みたいに動いていた。



「お前には敵わねーわ」


「え?なんで〜?ハジメ君の方が絶対強いのに〜」

「力の話じゃねーよ、バーカ」


「わっ…!!」



手を離し、行き場をなくした手をどうしようかと考え、行き着いた先は自分の頭だった。


少し大げさにため息をつき、頭を掻いて言うと莉子はキョトンとしながら首を傾げ、その姿に思わず笑ってしまう。


髪が乱れるくらいわしゃわしゃと頭を撫でれば、いつも通り髪を直しながら笑って見上げてきた。



「もー!髪がグシャグシャになる〜!」


「お前の髪はサラサラだからすぐ戻るだろ?」
(あー、なんかこれ懐かしいな…)



ムッと顔を作って言い、笑う莉子にいつも通りの反応を返せば、莉子は更に嬉しそうな顔をする。


1週間しなかっただけで、こんなに懐かしく感じるものかとどれほど自分の気持ちが莉子に依存しているかということを自覚した。



「じゃ、また明日な?寝坊すんなよ」


「しないよ〜っ!!!!」



莉子に手を挙げ、今度こそ自分の家へ帰るために歩き出す。


何度振り返っても、大きく手を振って見送ってくれる莉子に思わず1人で吹き出した。


「ホント、見えなくなるまで見送るクセ、直んねーなー」

(謝ることもできた、どれだけアイツが必要なのかわかった)

「…ま、一応感謝しとくか、あのバカに」


ぽつ、と呟いてケータイをポケットから取り出し、メールフォームを開く。


調子に乗る姿が脳裏に浮かんだが、フッと苦笑を洩らしてもう1人の幼馴染みの名前をアドレスから取り出した。
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