青の騎士と護られ姫

□10
1ページ/10ページ




-岩泉side-



及川と決着がついた次の日、朝練の終わった部室では昨日の勝負の話がネタになっていた。


その場にいなかった他の部員は相当気になるのか、根掘り葉掘りと花巻達に訊いている。



「ま、岩ちゃんが気づけたのは俺のお陰だけどね!何てったって親ゆ
「それはない、気持ち悪ぃからやめろ」

「なんで!!!!!」


「それに、気持ち伝えたって決めるのは莉子だっつの」

「まぁそうだよね、だから俺も諦めないからね!岩ちゃん!」


「俺ももう遠慮しねーからな」



着替えながら及川と今まで通りに接すると、及川は嬉しそうに笑った。


最近では“仲間”になりすぎて、“ライバル”という立場から遠のいていた及川が久しく“ライバル”になり少なからず気持ちが浮く。


「やっと元に戻って良かったです…」


金田一がホッと息を吐いたのを見て苦笑し、及川と2人、この1週間の不仲を頭を下げて謝った。



*****



昼休みに入ると直ぐに女生徒達に呼び出され、ひと気のないところまで連れ出される。


その女生徒達は莉子を傷つけた張本人達だった。



「…何か話あんだろ?何だ?」


「…私達、倉澤さんが羨ましくて、許せなかった」

「及川君とも、岩泉君とも仲が良くて、2人から特別扱いされてて…」

「可愛いし、幼馴染みだし、あんな子がいたら、私達の入る隙もないじゃないって、嫉妬した」


(…ま、なんとなくわかるけどな…)



ぽつぽつと話し出す女生徒達の話に少し既視感を覚えつつ、黙って聞く。


何より泣きそうな顔で話されてはどう対応すれば良いのか正直わからなかった。


「私、岩泉君が好きです」

「私も、大好きです!」


「な…っ!!??」


急に告白され「私も」という声が重なっていく。

1度にこんな大勢から告白されたことはなく、少し狼狽えて2〜3歩後ろへと下がって距離を置いた。



「岩泉君の返事が聞きたいの」


「…俺は…」
(…これは、はっきり言わねーと失礼だよな)


「俺は、莉子がす…好きだから…気持ちには応えらんねえ。…悪い」


「あの子の、どこが良いの?」



ジッと見つめてくる女生徒達の視線を受け、少し目線を泳がし、恥ずかしさに耐えながらもしっかりと全員を見返す。


本人に言うわけじゃない、大丈夫だと言い聞かせて深く息を吸った。



「アイツは…優しいんだよ、嫌がらせされたって人の所為にしねーし、いつでも相手の立場になって考えられる奴で。
自分で意思を持って行動できる強いとこもある。そこに惹かれたんだと、思う」


「そんな子、他にもいるよ?」


「まぁな…けど、肝心なとこで他人に甘えられない弱さとか見て、昔から守ってきたアイツをもっとちゃんと守りたいって思った。
アイツの…莉子への気持ちは譲れねえ。…悪ぃけど、わかってほしい」



話終わると「分かった…ありがとう」と涙ぐみながら言われ、かける言葉が見つからずに女生徒達に背を向ける。


謹慎が解けたら、莉子を傷つけた経緯をちゃんと聞き出して、莉子に謝らせようと思ったが、それが出来る雰囲気ではとてもではないがなかった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ