青の騎士と護られ姫

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勝負のルールは簡単だった。


スパイク練習とレシーブ練習を足したような形式で、片方がスパイクを打ち、片方がレシーブでコート内に上げること。


カバーできない様なボールはアウト。


どちらがどこまで出来るか。
交代で競おうと提案してきた。



「あのなぁ…そんな勝負して何になんだよ」
(あほらし…)


「じゃあ、岩ちゃんは莉子ちゃんから手を引くんだね?」

「…それとこれとは違ぇーだろ、何でこんなバカみてーなことしなきゃなんねーんだ」


「莉子が泣いてるからだろ!!!」



及川のその一言で、呆れて帰ろうとしていた足が止まった。


振り返ると真っ直ぐ睨みつけてくる及川の視線から目を離せず、体ごと向き直って睨み返す。



「今まで俺達は莉子を守ろうって一緒に決めて実行してきた筈なのに!!
何で岩ちゃんが莉子を傷つけてんのさ!!!!何であんな顔させるのさ!!!!」


「傷つけてんのはお前も一緒だろうが!!今までアイツがお前のファンにどんだけ嫌がらせされてたかわかってんのかよ!!?」



及川の言葉は胸の傷を抉り、思わず及川の元へ行って胸ぐらを掴み上げる。


そのまま、莉子が言わずにいた出来事を話してやろうかと思い怒鳴りつけると及川も負けじとつかみ返してきた。



「それでも莉子は離れていくことを望んではなかったよ!そんなの態度見たらわかるじゃん!!
これ以上莉子を傷つけるなら!!!莉子を守るのは俺だけでいい!!
岩ちゃんなんかに莉子は渡さない!」



“莉子を守るのは自分だけでいい”と及川に言われた瞬間、プチンと頭の中で音がした。


“莉子を守るのは俺だ”と強く感じ、胸ぐらを掴みあった膠着状態の場面をガラガラ…という扉の開く音で崩される。



「及川ー?来たぞー」

「えと…練習、ですか?」

「つーか何、殴り合い?えー」

「え"!?俺トス上げるだけってメール来たんですけど…!?」



「松川…渡、花巻、矢巾!?お前らなんで
「俺が呼んだんだよ」



音に反応して首だけで振り向いて見ると、そこには何か訳知り顔の松川と花巻、この状態に混乱する渡と矢巾が入ってきた。


掴んでいた胸倉を放し、挑発的に及川が笑う。

「____…さて、やろうか。岩ちゃん」

その一言とその顔で、ブチンとより大きな音がして返事をする代わりに及川を睨みつけながらニッと笑った。



*****



「______ッしゃあぁああ!!!」


「チッ……。あーあ、負けちゃった〜。岩ちゃんの馬鹿力ー!!」



訳のわからない渡と矢巾に説明をして勝負に協力してもらい、もうお互い何球打って何球受けたか分からない。


それでも及川のスパイクを上げ、その後及川の腕を弾いた事で勝負が決し、思わずガッツポーズをした。



「…岩ちゃん、莉子ちゃんをとられたくないってのが、何よりの答えだと、俺は思うな」


「…!!!及川…」


「俺はねー、大好きな莉子ちゃんの為なら何でもするよ?…今回みたいな事も、ね」


(最初っから、俺の気持ちを固めるための作戦かよ、恐ぇーな。…けど…)
「…ま、今回は助かった。お陰でなんかスッキリした」



汗を拭き、ニッと及川に笑うと、床に倒れこんだまま及川はニッコリと笑う。


1週間悩んで出なかった答えがこうもあっさりでるものだとは思わなかった。


“莉子を守るのは自分だ”
“莉子をとられたくない”


何も難しい事はない、これが答えだった。
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