青の騎士と護られ姫
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-岩泉side-
次の日の昼休み、昼食を食べ終えた後及川に連れ出されて着いた所には麻里と宏香が揃い、空気は少し緊張したものになっていた。
なんだなんだと眉を寄せながらその場に行くと、ニコニコヘラヘラと笑っていた及川の笑顔が消える。
「昨日の事、話しておくよ。岩ちゃん」
「…は…?昨日の事…って…」
「俺も麻里ちゃんから聞いたんだけどね」
「及川、莉子の事なら俺は別に
「昨日莉子ちゃんを傷つけたの、岩ちゃんの事が好きな子だったんだって」
“莉子の事ならもう怒っていない”そう言おうとした言葉は及川によって遮られ、何を言われたか理解出来ずに黙り込む。
笑顔を消した及川と、気まずそうな麻里と宏香の視線に、言われた意味を理解して血の気が引いた。
「…俺の、せいだったって、事か…?」
「岩泉君のせいじゃないよ、それは傷つけた子達が悪いんだから!」
「俺のファンの子達と、岩ちゃんを好きな子達が集まって莉子ちゃんを呼び出して、岩ちゃんを好きな子が頭に血が上ってやったんだって」
(俺の事が好きな奴…?莉子を傷つけたのは、及川のファンじゃくて…)
「俺の…せいで切られたのか…髪も…あの腕も」
「腕は私のせいなの。ごめんなさい」
及川や麻里から昨日の出来事の内容を聞き、及川のファンがやったことだと思っていた自分にとって衝撃的なことばかりだった。
“何故何も言ってくれなかったんだ”
“俺は莉子から信頼されていなかったのか”
そんな事を思っていた自分はバカだったとこの時気づいた。
「岩ちゃん、俺のファンもいたんだから、そんなに思い詰めることじゃないよ?」
「…だから莉子は俺に何も言わなかったのか…」
「岩ちゃん…。それは違うよ、イジメられてた訳じゃないから、言うに言えなかったんだよ、莉子ちゃんは」
(俺が傍にいたから、莉子が狙われた)
及川が冷静にさせようとしてくれているが、どう考えても冷静になれる気がしない。
今まで莉子を守る存在だと思っていた自分のせいで、莉子に危害を加えてしまった。
そう理解した時に、莉子の泣きそうな顔が脳裏をよぎる。
「莉子ちゃんと仲直りしなよ?岩ちゃん?」
「…っ、出来る訳…ねぇだろ…!!」
「…岩ちゃん…」
「…悪い…」
及川がニッコリと笑って場を和ませようとするが、頭が真っ白で何も考えられない。
莉子が自分のせいで傷ついたのに、どうやって話をすれば良いのか、どう接すれば良いのかがわからなくなった。
(俺が、莉子の傍に居たから…)
そう思うと、だんだんはっきりしてくる自分の気持ちに胸が痛む。
これまでの様に、隣を歩いたり、頭を撫でたり、一緒に出掛けたり、笑い合ったり、もう普通だったことが普通にできなくなると思うと、悔しさで腹が立った。
それでも自分が距離を置けば、噂になることがなければ、莉子はもう傷つくことはないと思えばそれも仕方がない。
「…教えてくれてサンキュな、お前ら」
「岩ちゃん…」
「ま、俺がアイツに出来ることなんてもうないんだってわかったわ」
「岩泉君…それは違うよ!」
「そうだよ!岩ちゃん!」
「…悪ぃ、先教室戻るわ」
悔しさや苛立ちが溢れ出し、グッと拳を握りしめて抑え3人に背を向ける。
けれどそれ以上に莉子に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。