青の騎士と護られ姫
□7
1ページ/9ページ
次の日の朝練終わりになると好奇の目に晒されている気がして思わず前を歩く岩泉の制服の裾を引っ張る。
周りが騒つき、そのタイミングで麻里と宏香が慌てて走ってきて岩泉と共にひと気の少ない場所へと連れて来られた。
「「2人ってホントに付き合ってんの!?」」
「はぁ!?ンなわけねーだろ!」
「でも昨日、2人でクレープ食べてた上に食べさせあいしてたって!」
「それは…でも、昨日は徹君もいましたよ〜?」
キラキラとした目で2人に問い詰められ、顔を真っ赤にした岩泉が慌てて否定する。
その瞬間ズキ…と胸が痛くなり、前にもそんな事があったなと話にあまり入れずに眉を寄せて考えていた。
その間にも話は進み、根掘り葉掘りと麻里が岩泉に訊き、顔を顰めながらも岩泉が淡々と答える。
「でも、とにかく及川が付き合ってない!って騒ぎそうだね」
「…ッたく面倒だな…」
(ハジメ君を好きな子達も私の事邪魔って思ってるのかなぁ…)
話を終えて歩いていく3人に着いて行けずにそのまま立ち竦み、何も考えていなかった自分の頭をフル回転させる。
今まで特に恋という特別な感情を持ったことが無い為か、人よりそういう事が疎い事は確かだった。
(もし、私の好きな人に、別の仲の良い子がいたら…?)
「おい、莉子?」
(私はその子の事が憎くて仕方なくなるのかなぁ…?)
「あ、うん、今行くよ〜!」
自分の中で及川や岩泉は幼馴染みとして特別であり、また2人もそういう扱いをしてくれていることは承知だ。
国見も、金田一も、真奈も、仲の良い友達の中でも特に仲の良い人達であり、2人とはまた違う特別であることも自覚している。
(でも、やっぱり恋愛とは違う感情なんだろうなぁ…)
不思議そうに見つめてくる岩泉に笑顔を向けつつ、ズキズキと痛む胸を制服越しにグッと握って誤魔化し、それぞれの教室へと向かった。
*****
昼休みになるまでに何度も聞かれた岩泉との関係を笑って否定していると胸の痛みが酷くなり食欲が無くなっていた。
中庭のベンチに座り、お弁当の包みだけを広げたまま真奈に胸の痛みの相談を持ちかける。
「まさかと思うけどね…これ、不整脈とかじゃないよね?…病院行った方が良いのかな〜…?」
「それって岩泉さんの事が好きって気づいたんじゃないの?」
「…………………え」
真奈の爆弾発言に目を見開き硬直するが、真奈は至って普通なのかそのまま昼食を食べ続ける。
そんな彼女の顔を固まったまま凝視すると影が差し、視線を上に向けるとニッコリ笑った及川といつも通り迷惑そうな岩泉がいた。
「教室から見えてたから来ちゃった!莉子ちゃん食欲ないの?その状態から動いてなくない?」
「え…あ…うん、なんか、体調不良…?」
「えっ!?大変っ!俺が介ほ
「おい、大丈夫かよ…熱はありそうか?」
「あ、そういう体調不良じゃないから大丈夫〜!」
(わっ…!ハジメ君ッ、近い…!!)
咄嗟にでた体調不良という言葉に慌てる及川を押し退けて岩泉が顔を覗き込んでくる。
“岩泉に恋をしているのでは”という内容の会話の後だからか岩泉を意識してしまい、顔に熱が集まりパニックになりかけていた。
「弁当は食えるだけ食え。残ったら俺でもコイツでも食ってやるから」
「え…でも…マズイとか言われたらショックだし〜…」
「…なにそれもしかして手作りなの!?莉子ちゃんの!?食べる!!俺!!食べたい!!」
「…じゃ、残すなら及川に食わせろ。全部はダメだからな?ちょっとは食えよ」
少しの沈黙の後に岩泉が言った言葉にまたズキンと胸が痛む。
手作りは食べたくなかったのかなと思うと気分が今以上に落ち込み、笑顔を作ることですら精一杯になるほどだった。
その後すぐに岩泉は友人にバスケに誘われて行ってしまいその場に及川だけが残り、他愛のない話で気分を誤魔化す。