青の騎士と護られ姫

□6
1ページ/8ページ




GWは岩泉が言った通り、試合ばかりの日々で正直リタイアしそうになるほどドリンクを作った。


体調を崩すことは無かったが、初めての過酷な労働に寝る時の記憶が全くと言っていい程無いくらい疲れが溜まっていた。



「良かったぁ…ゴールデンウィーク明けが月曜で〜…」


「莉子が遅刻なんて珍しいから相当大変だったのね…」

「もうハード過ぎて…部員の皆はやっぱりすごいよ〜…!」

「ま、男だし、ずっとバレーやってる奴ばっかだしな」


「それでもあたしからすればすごいのー!」



2限目に学校へ顔を出したその昼休み、机を囲んで真奈と何故か国見と金田一と昼食を食べていた。


小さく欠伸をしながらGWの話をしていると、思いついた様に金田一が話を切り出す。



「今日って及川さんと岩泉さんと遊ぶんだって?及川さんが昨日部室で騒いでた」


「うん、せっかく高校でまた同じ制服着てるんだし、記念に〜?」


「中学の時もそうやって遊んでなかった?」


「そうなんだよ〜。…でも、みんなバレーで忙しいから、多分この1回だけだと思う〜」



3人にニッコリと笑って言ってから、自分の胸の奥がズキ…と痛むのを感じて首を傾げる。


不安や悲しさがあるのかもしれない、と少し考え、それを誰にも悟られない様に抑え込み、笑顔を作って話題を変えた。



*****



放課後、ウキウキとした及川と、いつも通りの岩泉が教室まで迎えに来た所為もあり、1年の廊下はパニック状態になりかけていた。


1〜2年の及川ファンが殺到した上、遊びに行くと話した及川の言葉に一気に嫉妬と羨望の眼差しを全身に浴び、恐怖で俯く。



(怖い…!)


「お前は堂々としてりゃいーんだよ。何も悪いことしてねーんだから」


「ハ…ジメ君…」


「カバン貸せ。ほら、時間ねーから行くぞ。おい!グズ川!さっさとしろ!」


「え"!?チョット岩ちゃん!?待ってよ置いてかないでよ!!」



くしゃ…と岩泉は頭を撫でてくると鞄を取り上げられた。


腕を引かれ、驚いてされるがままに人を掻き分けて歩く岩泉についていく。


腕を引く強さや歩き方で岩泉が少し怒っている事が分かり声がかけ辛く、昇降口までただただ無言で歩いた。



「…ハジメ君、ありがとう」

「全く、及川なんて顔だけだろ、お前に嫉妬する意味がわかんねぇ」

「岩ちゃんヒドイ!!顔も魅力の1つ!及川さんにはもっと色々魅力があるもん!」


「徹君の顔以外の魅力〜…?」


「莉子ちゃん!?そんなホントに困った笑顔でこっち見ないで!悲しいよ!!」



校門を出て取り巻きやファンが居なくなると、岩泉にお礼を言い会話が始まる。


気を遣わせない様にしてくれている事が分かり、その2人の優しさに段々元気が出て来た。



「ね、今日なにする〜?」


「プリクラ撮るならゲーセンは必須だよね!!」

「莉子、何がしたい?」


「うーん…2人と一緒ならなんでも良いかな〜?」
(一緒にいると楽しいし、今日は思い出作りだし)


「じゃあクレープ食べに行かない!?俺お腹すいた!ちょうどおやつの時間だしね!」



3人で遊ぶ時は幼い時からいつも及川がまず先にやりたい事を提案してくれて、岩泉は文句を言いながらも付き合い、予定が決まっていく。


何気ないところに昔の面影を見つけては嬉しくなる自分は、相当2人のことが好きなんだろうなと並んで前を歩く2人の背中を見て感じた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ