青の騎士と護られ姫
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午後の大学生との練習試合を終え、大学生に気を遣い、慣れないスコアをつけ、ドリンクを作りに走った莉子はヘトヘトになっていた。
莉子を送る為に自主練を早めに切り上げて3人でゆっくりと歩いて帰る。
「…もう5月かぁ…早いなぁ…」
そう呟いた莉子を見て、もうすぐGWだと気づき、莉子の方を向いた。
「そういや、GWは練習試合ばっか詰め込んでっから、体調には気をつけろよ」
「うん〜」
「ちょっとでも辛くなったら言うんだよ?」
「わかった〜、ありがとう〜」
ニコニコと笑っているが、初めてのマネージャー業でこれだけハードな毎日の上に鬼のGWが来れば、倒れないかが心配になる。
元々体力のある方でもなく、体も丈夫とは言い切れない“守らなくては”と思わせる程見た目からして莉子はか弱い。
(…なんか今日は大人しいな…)
「莉子、どうした?」
「何か悩み?及川さんが相だ
「練習試合が楽しみなだけ〜っ!」
今日はマネージャーになって初めての1日練習で疲れたのか、莉子にいつもの元気が無いように感じられる。
それを訊いたとしても、きっと莉子はニコニコとはぐらかしてしまうだろうと考え、敢えて訊かない事にした。
「あ、ねぇ岩ちゃん、多分岩ちゃんとこ今度抜き打ちテストあるよ、英語」
「は?マジか、お前んとこあったのか?」
「そう!まぁ俺も事前に聞いちゃってたんだけどね!」
「…………な…」
「莉子?」
「莉子ちゃん?」
「月曜日の部活のない日に、3人で出掛けたいな〜って言ったの〜!」
及川も同じ事を考えたのか、取り繕う様に話題を出し、思わぬ情報に食いつくと、ポソ…と聴こえた莉子の声に2人同時に振り向いた。
名前を呼べばいつもの笑顔を見せ、“出かけたい”という提案にキョトンとして及川と顔を見合わせる。
及川はニッコリと笑って莉子を振り返り、嫌な予感がして思い切り眉を寄せた。
「いいねぇ!3人でプリクラ撮ろうよ!」
「プリクラ!?撮る〜!!」
「はぁ!?なんでだよ!遊ぶだけでいーだろ!」
「えーいいじゃーん」
「お願い〜!ハジメく〜ん」
「お前らこういう時だけ結託すんな!」
(及川の奴、余計な事言いやがって…!!)
女子が喜ぶプリクラが苦手で思い切り嫌がったが歩調を速めて逃げようとした右腕を及川に、左腕を莉子に引っ張っられる。
ぐっと力を入れるが、及川の力が強くて逃れられず、莉子からの「お願い〜」と言う声に段々断れなくなり、足を止めた。
(クッソ…莉子、断れないのわかっててやったな…!)
「わあーった!わあーったから放せ!!!撮りゃいいんだろ!?」
「「やったー!!」」
「…お前らマジで厄介だな…」
莉子は及川とハイタッチをして喜び、こういう時に味方にならない及川の厄介さに思わずため息が出る。
はしゃぐ2人を見てどっと疲れに襲われる感覚がして片手で顔を覆い、呆れたように呟いた。
「ゆっくり休めよ、明日も部活なんだからな」
「莉子ちゃん、GW明けの月曜、約束だからね!」
「うん!!ありがとう〜!楽しみ〜!」
家まで送り、及川が遊ぶ日を念押しすると断れない程の笑顔で見上げられ、思わず苦笑して頭をわしゃわしゃと撫でた。
ぽんぽんと及川が頭を撫でてから、手を振ってくる莉子にお互い応えつつ背を向ける。
「なーんか、変だよね、莉子ちゃん」
「…隠してるつもりなんだろうな、アレで」
「遊ぶ日はすっっごく甘やかしてあげようね、岩ちゃん!」
「周りから見りゃ俺らはいつでも莉子には甘すぎるくらい甘いらしいけどな」
及川と並んで歩き、後ろを振り返ればまだ見送っている莉子にまた手を挙げて応えつつ話しながら帰路に着いた。