青の騎士と護られ姫
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-岩泉side-
次の日、良い案も浮かばずに昼ご飯をいつも通りに松川、花巻、及川で食べていると、ニコニコとした及川が眉間に人差し指を差してきた。
「岩ちゃ〜ん、すんごい皺!一円玉挟めそうだよ?」
「…ブットバス」
「なんで!?」
「俺は莉子を練習試合に呼ぶって言ったお前の代わりに色々してんだろが!」
「「色々って?」」
馬鹿にするような笑顔の及川に向かって頭の中の整理のつかないモヤモヤをぶつける。
いつも通り頭突きをしようと立ち上がると及川は「顔はヤメテ!」と喚き、もう慣れっこである花巻と松川はやり取りを止めずに声を合わせて質問をしてきた。
その質問にピタリと動きを止め、及川をギロッと睨みながら席に座る。
「…話聞いたり、とかな」
(本当に話しただけだったけどな…)
「昨日会ったの!?莉子ちゃんと!?2人で!?居ないと思ったら!ずるいっ!!!」
「うるせーな!ちょっとケーキ食っただけだっつの!」
「プッ…岩泉がケーキ…」
「及川と幼馴染みの為にケーキ…ククッ」
「お前ら笑ってんじゃねー!!!!」
結局は失敗に終わった昨日の出来事を話したいとはあまり思えず、ポツリと言うと今の今まで逃げようとしていた及川は逆に掴みかかってきた。
勢いで言い返し、面倒な事になったと思った矢先に花巻と松川に笑われて顔に熱が集まる。
「仕方ねーだろ!思いつかなかったんだから!」
「つかさー、そりゃー試合に出るお前らに誘われたってなー?」
「「??」」
「確かに。嫌がらせされても試合中じゃ守ってももらえないしな」
「俺は試合中でも助けに行くよ!ね!岩ちゃん!」
「だから莉子はそれが嫌だから遠慮して_____…」
(俺らに迷惑かけたくねーのに、誘った俺らが何も出来ねーんじゃ莉子も怖いんじゃ…)
花巻や松川が当然の様に話す内容を及川はさも当然の様に返してニコニコと笑う。
及川に話を振られ、また眉を寄せて反論しようと自分で話して初めて気づいた。
“元凶の自分達ではダメだ”
漠然とした感じではあるがそう思うとふと頭が軽くなる。
「…岩ちゃん…?」
「あー…そうか…。単純に、俺らじゃダメなんだよ、あークソ!もっと早くに気づいときゃ良かった」
「ちょ、岩ちゃん?どゆこと!?」
「いや、いい。お前に言っても面倒な事にしかなんねーから。花巻、松川サンキュ」
「え?おお、シュークリームで良いぞ」
「及川に頼め」
「なんで!!!??」
急に黙り込んだからか、全員の視線を浴びながら頭の中に浮かんだことをそのまま口に出すと今度は及川が眉を寄せた。
当事者の自分達がどれほど考えても頑張っても莉子が頷かないのは当たり前だと今ならわかる。
花巻や松川みたいに第三者でなければ分からない感情だと実感し、お礼を言って昼食をさっさと済ませ、目的の為に“協力者”を捜した。
*****
「____て事で、頼んでも良いか?」
「勿論、それは構わないけど、あたし達が誘っても来てくれるか分かんないよ?」
「そん時はそん時だ。しゃーねーよ」
「その時は一応連絡入れるね、見れるか分かんないだろーけど」
中庭で昼食をとっていた同級生2人、そして莉子を気に入っていた及川ファンではないこの2人、麻里と宏香に事情を説明する。
快く頷いてくれた2人にお礼を告げると「必死だね」と笑われるが及川のせいでこんな事をしている為及川に頭突きを食らわせた。
「考えたねぇ、岩ちゃん」
(昨日自分で言っといてすっかり忘れてた…)
「…人頼ってどーにかすんのもどうかと思うけどな」
「でも、莉子ちゃんからしたら俺達がしつこく誘うより良かったと思うよ?」
左腕を摩りながらニッコリ笑顔を向けてくる及川に少しまだ腹を立てながらも頭の中にあったモヤモヤはマシになっていた。
後は莉子が決めることだと思いながらも、少しだけでも観に来るのではないかという期待が出る。
「来てくれると良いなぁ、莉子ちゃん」
「その前にお前、試合に出たいならさっさと病院行って帰って来ねーと間に合わねーぞ」
「予約してるから大丈夫だよ〜?でも、莉子ちゃん来るかもだったら急がないとね!」
珍しく裏のない笑顔を向けてきた及川に自然とニッと笑い返した。