青の騎士と護られ姫

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「…ん?」

「お前、変わんねーな」

「えっ!?それどういう意味〜っ!?」



思わず漏れた本音の真意に気づいたのかムッと顔を膨らませて怒り「好きなんだもん!」とタルトの上に並べられたイチゴをパクッと食べる。


食べた動作から動かなくなった莉子にどうしたのか訊こうと持っていたカップを置くと「さっきの話ね…」と言い出し、複雑そうな顔をしながら少し俯いた。



「…マネージャーってさ、ドリンク作ったり、ビブス洗ったり、スコア取ったりだけじゃなくて…色々、難しそうでしょ〜…?」


「…まぁ、選手の調子とか見とかなきゃいけねーしな。特に及川や国見みたいなタイプは判りにくいから余計にな」


「…バレーだってあんまり詳しくないし、体力ないし…自信、ないんだよね〜…」



(確かに、体力はねーな…それに…)
「及川の取り巻きも怖ぇーしな」



あまりに不安そうに話す莉子を見て、正直居た堪れない気持ちになり、少しでも空気を変えようと冗談ぽく言うと、莉子は少し笑う。


少し笑ってまた表情を無くし、紅茶を見つめながら黙り込む莉子を見て、きっと本人の中にも色々な考えがあるのだろうと何も訊かないでおいた。



(…そもそも、俺は無理やりマネージャーにさせるつもりはねえしな…)
「明日、放課後に練習試合あるから見に来いよ、で、やりたくなったらやればいい」


「…うーん…。考えとく〜」


(…この様子じゃ明日来ない可能性高いな。…どうすっかなー)



1つの提案として、今日の目的の1つである練習試合の誘いをするが、曖昧に笑って躱す莉子の反応に内心渋い顔をした。


及川ほど器用でもなければ女慣れもしていない。

いくら幼馴染みとはいえ、この状況をどうすれば良いのかわからずにまた頭を悩ませ、莉子の負担にならない様な言葉を探した。



「あー…及川は今怪我してっから、出られるかは分かんねーけど」

「え…怪我!?…全然、気づかなかった…」


「ま、軽い捻挫だから心配すんな。アイツも元気そうだしな」
(…莉子、昔より笑顔が減ったな…)



残りの紅茶を流し込み、カップをお皿に直して莉子に苦笑するが、悲しそうに俯く莉子の表情を見て違和感を感じる。


“しまった”と自分の失言に気づき、慌てて莉子に笑いかけた。



「ま、俺は出るからな?見に来るなら国見や金田一だけじゃなくて、俺のことも応援しろよ?」


「あはは!うん、そうする〜」


「よし、じゃあ行くか。他になんか見たいもんでもあるか?付き合うぞ」

「ほんと〜?じゃあ雑貨屋さんに行きたいかも〜」



一言で言うと、莉子は優しい。

押しに弱い所もあるが芯がしっかりしていて、たまに周りが驚くほど強情な時もある。


ただ、基本優しいが頑固なその性格だからこそ扱い難いと思う事も多々あり、今がその時だった。



(落ち込ませてどーすんだ俺は!…あー、くそ、他の手考えるか)



切り替えるように立ち上がり、今度は鞄は譲らないと言って聞かない莉子の頭をコツンと小突いて店を出た。
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