青の騎士と護られ姫

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-岩泉side-



“考える時間が欲しい”と言った莉子の返事が不満だったのか、及川のテンションは確実に下がり気味だった。


昼休みに会いに行くことは止めないが、マネージャーの話はしない様にと散々言いつけたからか珍しくその言いつけを守っている。



「なあ岩泉ー、及川はなんであの姫ちゃんをマネージャーにしたがってんだ?」


「姫?誰だそれ」


「いや、幼馴染みの倉澤だろ?」

「そうそう。姫扱いだから姫って呼んでみた」


「何だそれ」
(あだ名でもなんでもねぇな…)



土曜日の練習試合後、自主練の途中に花巻に訊かれ、莉子が見学した日の帰り道に話した事を思い出す。



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莉子を家まで送り届け、自分達の家の方へ向かう途中、莉子が居る前では絶対に答えない事を及川に訊いた。



「お前なぁ…マネージャーなんかにして、莉子が嫌がらせされたらどーすんだよ」


「でもさ、ちゃんと試合見て貰えるの、今年が最後だよ?マネージャーになったらさ、あんなにコソコソしなくたって済むじゃん」


「…まぁ、そうだけどな」



莉子は大事な幼馴染みであり、バレーを始めても蔑ろにした事など無かったが、周りはそうはいかなかった。


ただでさえ人気のあった及川は更に人気を集め、妬みの対象にされた莉子は何もしていなくても睨まれたりしていた。



「本人はバレてるなんて今でも気づいてないだろうけどな」


「俺達が莉子ちゃんを見逃す訳ないのにねぇ」


「…まあ、アイツなりに考えた方法だったんだろ」



中学2年の試合、応援に来た莉子を2人で案内していた所を及川のファンと出くわし、その後莉子は嫌がらせをされ、試合に影響が出た事があった。


それから表立って応援には来ないで、試合が始まってから、コッソリと観に来て、試合が終わる前にコッソリと帰る莉子を見つけていた。

“試合、どうだった?”

バレてないと思っている莉子はいつもメールや電話で訊いてきた。



「莉子ちゃんに、最初から最後まできっちり応援に来て欲しいよね」


「そうだな、莉子が悪い訳じゃねーんだから、気にせず試合が観れるようにしてやりてえ」



試合に誘っても“私が行くと、試合の邪魔になるから”と無理に笑った笑顔で断る莉子に試合を見て欲しいと2人でよく話し合っていた。


いつからその会話をしなくなったんだと言うほど、月日が経ってしまっていたが、及川がちゃんと覚えていた事に少し驚いた。



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「____だから及川は、正式にマネージャーにすりゃ良いって考えたんだろ」


「あー、ナルホドな。まぁ正式なマネージャーになりゃ試合会場にいんのも当たり前だしな」

「考える事が及川っぽい」


「ただ莉子になんて説明すりゃ良いのか分かんなかったらしくてな、強行突破したのに答えがまさかの“考える”だったから拗ねてんだよ」



捻挫までして練習以外では明らかにテンションを落としてため息をつく及川を周りが心配そうに眺める中、花巻と松川だけは笑っていた。


やり方はともかく、及川の考え方には珍しく納得した為、仕方なく及川に協力してやろうと考える。



(どうすっかなー…説得…)
「アイツ…意外に頑固だからな…」


「お?岩泉も莉子姫のこと説得すんの?」

「姫って言うなっての」



ニヤリと笑う花巻に眉を寄せて言いながら莉子にどうやって興味をもってもらうかを考えていた。
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