青の騎士と護られ姫

□1章 1
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「おい!及川と俺の幼馴染みに何か文句あんならはっきり言え!あとそんな事しかしねーなら帰れ。練習の邪魔だ」


「ッ…!ハジメ君…っ」



思ったより言い方がキツくなり、体育館内がしん…と静まり返る中、弾かれた様に顔を上げて泣きそうな顔をする莉子と目が合う。


「まぁまぁ!」とヘラヘラ笑いながら場を和ませつつ女生徒に釘をさす及川を横目に莉子へと視線を戻し、莉子の元まで急いだ。



「…莉子」

「ありがと〜、ごめんね…」


「…そんな顔すんな。お前は悪くねーんだから」
(この笑顔はずっと見慣れねーな…)



泣きそうな顔で笑う莉子を見てられず、誤魔化すように莉子の頭をわしゃわしゃと撫でる。


震えながらキュッと目を瞑る姿はウサギを想像させ、見上げてくる視線に少し居心地が悪くなりムスッとすると莉子が少し笑った。



「もぅ!髪がグチャグチャになるよ〜!」

「はは、悪い」

「でもありがと〜!元気でた〜!」


(やっぱこっちの顔のが似合ってる)



パッと笑って見上げてくる莉子にニカッと笑顔を返すと、いつも通りの莉子に戻っている。


笑顔で文句を言う莉子に「悪い」と言いながら、少しの照れ隠しも込めてまたわしゃわしゃとまた頭を撫でて練習に戻った。



「2人して必死に幼馴染み守ってる感じがする」

「は?」

「すげー姫扱いなのな」


(…姫?)


「あったりまえじゃんっ!莉子ちゃんは俺達のお姫様だもん!ねー、岩ちゃん!」

「…うるせえ。さっさと練習しろグズ」

「ヒドイ!!!!」



“姫扱い”と花巻が言い出し、意味はわかるがそこまで守ってやれてはいないだろうとただ単に思っていると及川が割り込んでくる。


及川が言い切った“お姫様”には少し納得してしまい、チラリと莉子を見てから練習に集中した。



*****



部活が終わると珍しく急いで着替えた及川と待たせていた莉子の3人で帰ることになった。


莉子がいて余程嬉しいのか、ご機嫌に前を歩く及川の後ろ姿を眺めながら莉子と並んで歩く。


ニコニコと笑いながら「機嫌良さそう」と言う莉子に及川の聞かれていない時に言っておこうと声の音量を下げて口を開いた。


「嫌なら断われよ?」


当然、莉子から返事が返ってくると思ったが、考えは甘かったと次の瞬間に痛感する。



「え!?ダメダメ!莉子ちゃんには臨時マネージャーになって貰わないと!」


(今まで鼻歌歌って前歩いてやがった癖にコイツ…!)
「なんでそんなに莉子をマネージャーにしたがるんだよ」


「え?だって公式戦で後輩の作ったドリンクよりも、莉子ちゃんに作ってもらったドリンクが飲みたくない?」


「「………………」」

(あり得ねぇ程のバカだコイツ)



及川の必死な様子に気になった事を口にすると当の本人は当然の様な口ぶりで理由を話す。


莉子をマネージャーにしたい理由が驚くほどくだらない上に、ニコニコと笑う及川に呆れて言葉も出ずに黙り込んだ。



「莉子、やらなくていいぞ、絶対に」

「え…あ…うん…?」

「ぇえ!?なんで!?なんでなの岩ちゃん!!」


「そんな理由でマネージャーに誘う奴があるか!!!」



呆れた上に段々と苛立ち、無表情だと自分で分かるほどの無表情で莉子に話しかける。


信じられないという顔をわざと作って喚く及川を怒鳴ると笑いながら慌てて逃げて行き、反射的に追いかけた。
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